安倍首相は子供が1歳半になるまで認められている育児休業を3歳まで延長する方針を表明し、今後、政府の産業競争力会議で議論し、成長戦略に織り込み2014年度の導入を目指すとしている。少子高齢化に伴う労働力人口の減少に歯止めをかける狙いと言うが、社会全体で子育てを支援するという子育て政策のフレームを変質させかねない唐突な方針は、実現に向けては給付負担や企業のコスト増大、職場内で高いスキルを望む女性に対する育児支援のあり方などの克服すべき課題は大きい。
 現在の育児休業制度では最長で子供が1歳半になるまで休業前賃金の50%が育児休業給付され、11年度の初回受給者は約22万5千人で労使折半の保険料と国庫負担で賄う方針だが、本来、1/8であるべき国の給付は半分に抑えられている。
 育児休業期間が延び、給付も広がれば、育児のゆとりは増え、保育所の待機児童は減少するだろうが、国が社会保障給付として負担すべき財源を民間にツケ廻ししている現状では、11年度で約2600億円の年間支給額が膨らむのは確実で労使の負担は増加する。先んじて社内制度として休業延長を認めている企業は少なくないが、休業の延長中は無休としており、国の支援が従来のままでは給付の負担のみならず、代わりの人材を確保する追加的コストは無視できない。
 政権交代で、保育所、幼稚園の一体化となる総合子ども園の創設や子ども手当などの「子ども子育て新システム」はお蔵入りとなり、永年議論されてきた子育て支援施策は「小田原評定」の様相を呈し、何一つ進んでいない。待機児童問題が声高に言われるが、ほとんどの幼稚園は大きく定員割れしており、一元化すれは社会コストは大きく縮減できる。「決められない政治からの訣別」は政党の議席数云々ではなく、議員の問題意識と現状を改善させようとする意志にかかっていると思う。