テーマは敢えて『思い出の競走馬』とさせていただきます。
去る4月27日、昨年の中山大障害を勝ち、堂々と障害界の頂点に立った若き障害王マーベラスカイザー号が腸捻転によりこの世を去りました。
5歳でした。
マーベラスカイザー
父マーベラスサンデー
母マーベラスウーマン(母の父ウッドマン)
栗東:柴田政見厩舎
馬主:笹原貞生氏
通算成績:20戦5勝(うち障害7戦3勝)
主な勝ち鞍:中山大障害(2012)
マーベラスカイザーは2010年7月10日、阪神での新馬戦でデビュー。
同じレースに出走していたのは、後にファンタジーSを勝つマルモセーラや、障害オープンのアスカノバッハだった。
当時は全く注目されておらず、18頭立ての17番人気。
結果は勝ったエーシンジェネシスから1秒差の9着。
だが、初勝利は意外と早くやってくる。
2戦目、札幌での未勝利戦で早々と初勝利を挙げた。
そこからの3戦は振るわなかったものの、京都2歳Sでプレイやダノンバラードを破って勝利をマーク。
オープン入りを果たす。
が、やはりオープンでは荷が重かったか、ラジオNIKKEI杯(ダノンバラード)、シンザン記念(レッドデイヴィス)、きさらぎ賞(トーセンラー)にやぶれ、4ヶ月休養の後、自己条件へ。
自己条件に回る頃には古馬との混合戦になっており、ここでも苦戦を続けた。
初戦のストークSではエアラフォン、エーシンリターンズが相手となり惨敗。
続く天橋立Sでは後のJCダート馬ニホンピロアワーズ相手に惨敗。
さらに大文字Sでも、その直後に朝日CCを勝つミッキードリーム相手に惨敗。
再び挑戦したダート戦(KBC杯)でもスタッドジェルラン相手に惨敗。
4戦続けて惨敗を喫した後、障害入りへ。
迎えた2011年10月2日に障害入り初戦を迎える。
すると、ファンは彼を1番人気に支持し、同馬もその期待にきっちりと応え、初障害初勝利をマーク。
さらには同馬にとってこれが初めての1番人気での勝利となった。
しかも着差は9馬身差の大圧勝である。
続く入障2戦目はデンコウオクトパスに8馬身置かれた2着に敗れるも、3着シゲルジュウヤクには10馬身差をつけた。
そして障害3戦目のオープンで待望の障害2勝目をマーク。
ここでも相手はシゲルジュウヤクだった。
4戦目にして障害重賞に挑戦。
京都ハイジャンプである。
ここではさすがに相手が強かった。
勝ったエムエスワールドはレコード。
2着テイエムハリアーはご存知の通り京都無敵。
それらを相手にテイエムハリアーから8馬身離されるも3着を確保する。
ちなみに4着は、またもやシゲルジュウヤク。
この2頭、何かあるに違いない…。
障害5戦目はオープン。
このレースは別定SAだったこともあり、同馬は障害未勝利、障害オープンの2勝ながら62kgが課されることになる。
しかし、ここでも同馬は力の違いで3着を確保した。
そして迎えた障害6戦目。
ついに中山大障害への挑戦である。
ここには当時のハードル界では雲の上とも言える存在であったマジェスティバイオが登場。
そしてその相手筆頭にもバアゼルリバーがいたが、それでもファンは同馬に3番人気の評価を与えた。
それまでの勝ち鞍は上述の通り2勝。
障害重賞では連対したことがない。
しかも他馬と同斤量の63kg。
この斤量も当然初。
良いことなど1つも無かったが、マーベラスカイザーは熊沢騎手の手綱に導かれ、ついに戴冠を果たす。
それも、強敵2頭としっかりと勝負をして勝ったのだ。
※写真は昨年の中山大障害回顧の際に用いた物を再掲。
熊沢騎手は意外にもこれが中山大障害初勝利。
中山大障害優勝の翌週に有馬記念に勝つという熊沢騎手の夢を1つ叶えたことになる。
これにより、結果的には授賞を逃したものの、2012年の最優秀障害馬の候補にも名を連ねるにまで成長したのだ。
2013年は中山グランドジャンプ制覇を目標に、3月の阪神スプリングジャンプから始動する。
同レースにはバアゼルリバーも出走。
今度はJ・GI馬として迎え撃つ立場となった同馬は、逃げるシゲルジュウヤクを虎視眈々と狙うも、最後は斤量の差と今年初出走という点が響いたのか、2着まで追い上げるのが精いっぱい。
何とかクビ差まで詰め寄ったが、初めてシゲルジュウヤクに先着を許すことになってしまった。
(やはり何かあるぞ。この2頭。)
しかし、2013年の滑り出しを上々の成績で終えると、中山グランドジャンプへ向けての調整が進められた。
その間、思いもよらぬ事故が起こる。
骨折による休養を余儀なくされたのだ。
これにより中山グランドジャンプを断念し、秋の復帰に向けて放牧に出ることとなった。
骨折した箇所を治癒しながら英気を養っていると思われた矢先、骨折のニュースを遥かに上回る衝撃が我々障害ファンに走った。
腸捻転によるマーベラスカイザー号の死。
私自身は言葉が出なかった。
まさか!
と思った以降の記憶は無い。
腸捻転という病気は、腸が長い馬には屈腱炎と並ぶ最大の敵と言っても言い過ぎではないほど、やっかいな病気である。
かつてはナリタブライアンも腸捻転に起因する胃破裂でこの世を去っている。
ロイスアンドロイスも腸捻転の前に倒れた。
さらには、昨年の帝王賞を勝ったゴルトブリッツも腸捻転が原因であった。
こういった形で最期が訪れるとは思いもしなかっただけに、本当に残念でなりません。
バアゼルリバー、マジェスティバイオに対し、きっちりと勝負をして勝ったのだから、この馬の障害馬としてのポテンシャルはトップクラスだったと言っていいでしょう。
今後も、東のマジェスティバイオ、西のマーベラスカイザーと、東西の横綱が日本のハードル界を引っ張っていってくれるんだろうと思わせてくれたばかりの出来事でしたから、なおさらですね。
今はただ、『ゆっくり休んでくれ』と。
そして、これからの『障害レースを見守っていてくれ』と。
それだけを言いたいと思います。
お疲れさまでした。
そして安らかに・・・。
【投稿者】 ぼや



