今日。
別に期待なんかしていたわけじゃなく。
この日が晴れである決まりなどなく。
特別な一日は過ぎていくもんだ。
「さーさーのはっ、さーらさらー」
すれちがう子供が笑顔で歌うその曲は、私も知っている、今日の日の歌。
子供は無邪気に、1番だけを繰り返して住宅街に消えていった。
深い意味も知らず、歌を口ずさんで。
「さーさーのはー……」
この日を祝う歌。
引き裂かれた二人の男女が出会う日に歌われる詩。
私は、ぼんやりとした眼で曇空を見上げた。
夜までは、まだ少し時間はあるけれど
もう今日は晴れないだろう。
天の川は私たちには見えないけれど
あの厚い雲の上に男女は今日という日を祝い歌っているのだろうか。
私は幼い幻想を抱いて、再び歌を口ずさみ始めた。