ジョーシンで。
深く不覚。
まさか、こいつにときめいちゃうなんて。
俺は、今更ながら言葉の恐ろしさという奴に気付く。
舞は専門学生だ。将来はゲームのキャラクターデザインとかをしたいみたいで
そういうところに通ってる。深くは知らない。介入しないのが俺のポリシーだから
だ。
そんな俺たちは高校からの付き合いで、付き合いといっても恋愛うんぬんの付
き合いなんかではなく、偶然部活が一緒だっただけだ。俺からあいつに対しても、
もちろん、あいつから俺に対しても恋愛感情は存在しない。皆無だ。
だから、うん、きっとそうなんだって。
俺はペンタブとにらめっこをして、でうんうん唸っている舞の横で同じく唸っていた。
「おい。お前うざいよ、邪魔。静かにしてくれないと選べないだろ」
……だから、な。そうなんだって。
不覚に悩んだ自分が不覚。……チ。テンパり過ぎて考えがおかしい。
大学では文芸を専攻してる俺は、どうやら『素敵な言い回し』って奴に弱いみたいだ。
だからって、こいつにときめくことないじゃんか、俺。自分に言い聞かせて、未だにペ
ンタブ購入を真剣に悩んでいる舞の方を見た。
あんな言葉を吐いた割にはしっかり悩んでるじゃねぇか。俺は、舞がペンタブを購入し
て、とことん『そう』なればいい心の中で毒を吐いた。
「どう転んだって人生は後悔するもんだろ」