誰かにささげる詠(うた)
「あっ」
世界のどこかで誰かが言った。
その瞬間、世界中で多くの人間が死ぬ。
悩みぬいて、自ら死を選ぶものも
苦しみぬいて、病で逝くもの
生に浸っていたものが、何かの事故で
そう、世界にさまざまな生き方をしていたものが
さまざまな理由で消える。
魂が消えうせる。
ふ、とした
この瞬間に
たとえば私が誰かの死を悲しんでいるこの瞬間に
また、人間たちが死んでいく。
そして、同時に生まれおちる魂たち
皮肉なもので
世界はループする
君が死んでも世界は廻る
私が死んでも、世界は廻る
脆い人間たちが、壊れて
脆い人間たちが、出来あがる
そのループだ
君はいま苦しんでいますか?
悩んでいますか?
それとも、生に浸って明日死ぬことなど知らずにいますか?
脆い私たちは
いつか消えてしまうのです。
それが、10年後か明日か、50年後か今日か
誰にも分らないけれど
消えて、魂は壊れる
どんなに栄華を築こうとも
ギリギリの生活を強いられていても
同じこと
君のことを想って
誰かが涙を流すんだ。
親がいない?友達もいない?
だけど、このメディア社会で
君が死を迎えたことを報道で知った私は
顔も知らない、性格も知らない
たった今一つの表情を知った、もしくは顔さえ知らない
君を想って涙を流す
君の冥福を祈って