きのうは、早めに眠っていたのですが、
ひょんなことから起きて、なかなかできなかった写真の整理をすることに。
すると、パーヴォの声がして、
「チコ、僕がチコの古い写真を見て、どれを処分してどれを残すべきか
全部みてあげる」といってくれました。
そこで、恐る恐る写真アルバムをあけてみたら・・・・・。
 
私は小さい頃、とても幸せいっぱいだったことがわかりました。
両親はとても若く、穏やかで優しく、
精いっぱいの愛情をかたむけてくれたことが
よくわかりました。
けっして裕福ではないですけど、
とても希望に満ち溢れていたことがわかってうれしかったし、
両親にあらためて感謝したくなりました。
 
パーヴォが「パパとママがどんな想いで君を育てたかわかって、
よかったね。じゃ、このアルバムはちゃんと残しておこうね」
といってくれました。
 
次にとりかかったのは・・・なんと、東宝時代の写真でした。
 
パーヴォはそれらの写真をみるなり、
わっ、と小さくうめき声をあげました。
 
「チコ!!!・・・・君、東宝にいるの、とってもとってもつらかったんだね?
笑顔の写真が一枚もないよ。
顔がとてもひきつっているし、笑顔が不自然だ。
 
ニコニコの笑顔の写真は、テレビ部時代、黒木瞳さんと映ってる写真と、
高嶋政宏さんと映ってる写真。
あとは、同期の仲間たちと入社前に撮った写真だね。
この3枚だけが魅力的なだけで、
あとは全然・・・・まったくさえないし、いつも悲しそうな顔だよね。
 
特に宣伝部時代の写真は、こんなにやせていて、
ひどくかなしそうな顔で映ってる。
ファッションセンスも全然よくないし・・・チコの面影が全然ないね。
苦しかった?宣伝部時代」
 
私は思わず、ちいさくうなずきました。
「前にも話したけど、このころ、前の夫と結婚していて、ひどく貧乏だったし、
連日上司に怒鳴られてばかりいたし、
いつも宣伝部の倉庫で泣いてたわ。
ゴジラの着ぐるみを着させられて、
休日出勤してたりしたし」
 
パーヴォはさらに、私が病気になってからの写真をみて、
ぽろぽろと涙をこぼしました。
「なんてつらそうな顔をしてるんだ、チコ!
がりがりにやせてるじゃないか!
顔色もひどくわるいし、髪なんか、全然バサバサで荒れ放題だ・・・
それに目の焦点が全然あってないよ。
チコの今の目の輝きが全然ない。とてもうつろだ・・。
薬とかのまされて、つらかったんじゃない?」
 
私が思わず涙ぐみました。
「ええ、人生でいちばんつらかった時期だわ。
病気のことで、東宝の中でさらにいじめられて、
バカにされて、キチガイ扱いされていたころよ。
薬の副作用もきつくて、毎日死にたい気持ちでいっぱいだったの」
 
パーヴォはそっと私を抱き寄せました。
「チコ、僕に君をだきしめさせて。
こんなに苦しい想いをさせてたなんて・・・
もっと早く、君と出会えばよかった。
そしたら、もっと君を早く救えたのに!」
 
パーヴォは前の夫と一緒に映っている、私の写真も見て
さらに絶句しました。
 
「ああ・・!!君はとても不幸な結婚を強いられていたんだね!
もっと顔が生気がなくて、しかも、女性らしい幸せな笑顔がひとつもないよ。
前のご主人と一緒に映ってる写真、ことごとく、
顔がひきつってるし、まったく自然じゃない。
ご主人もあまりうれしそうじゃない。
ねぇ、まったく君、ご主人のこと、愛してなかったんじゃないの?
 
それに、これはお姑さん?
君にすごい敵意をもってるね。
目が全然わらってないよ。
一緒にいる、君がとても青ざめていて・・。
いつも一緒にいることをしいられたの?
 
それに、君がつくった料理の写真・・
なんでこんなにたくさん作りすぎていたの?
これじゃ君が異常に太ってしまうわけだよ!
ご主人はなにもいわなかったの?」
 
私が、なきじゃくりながら答えました。
 
「前の夫が、このくらいのボリュームをつくらないと、
まったく満足してくれない人だったの。
すごい勢いで食べるのだけど、私もそれに付き合わされたの。
味付けも、彼好みで、トマトケチャップだの、マヨネーズだの、
カロリーの高すぎる食材をたくさん入れられて。
私の作る料理に、彼はまったく満足しなくて、
自分で揚げ物とか作って、
私にたべさせて、
『ほらね、ともちゃん、僕のほうがずっと料理が上手だし、
君はなんでも不得手だね。全然家事がだめじゃないか』
っていつも私の事をなじっていたわ」
 
すると、パーヴォが激高しました!
「なんだって!」
 
私はパーヴォの言葉の勢いにすっかりビックリしてしまいました。
パーヴォはいったのです。
 
「チコ!いいかい!君、会社のせいだけじゃなかったんだよ!病気になったのは!
前のご主人のせいでもあったんだ!
君に向ける表情、写真でみてごらん!笑顔がひとつもない。
なんて冷たい眼差しなんだ!
いいかい、前のご主人はね、最初から君をまったく愛してなかったんだよ!」
 
私が「え?なんですって?」
と茫然としていると、
パーヴォが興奮気味にいいました。
 
「彼は自分が威厳ある存在として、
君をさんざん押さえつけ、バカにして、踏みつけにしてたんだよ!
大学時代の写真もみてごらん!
まったく君に対する視線がつめたいじゃないか!
僕が君に向ける熱いまなざしと全然違う事がわかるかい?
なんでこんな男と君、結婚したの!?」
 
私が、恐る恐る、「彼と私は、立教大学の学内でも
もう公然の仲だったの。というか、前の夫が、
学内中に『僕の彼女はチコですから!』って
教授たちにも喧伝していたの。
だから、私、どこにも逃げ場がなくて・・・」
 
パーヴォがそれを聴くなり、
「なんて卑怯な奴なんだ、君の前の夫は!
それって半分恫喝じゃないか!
彼のプライドを満足させるためだけの交際だったんだよ!
自分の支配欲の!」
と真っ赤になって怒りだしたのでした。
 
「写真ってね、実はこんなに正直に人間関係を表すものはないんだよ。
僕、彼をマカオのコンサートで見た時から、
君と彼は離婚すべきだとおもっていたけれど、
これで確信がもてたよ。
チコ、君は誠実に彼を愛して、従順な妻だっただし、
きちんと家計もやりくりできてたし、
仕事もきちんとこなしていたんだ。
 
でも、そんな優しい君を、彼は心の底では軽蔑し、ばかにし、
君への尊敬も愛情も、彼は微塵ももっていなかったんだよ!
 
ただ単に、君という、大変優秀な女性を抑圧し、
自分に従わせる征服欲を満たすことだけだったんだよ、
この男が考えていたことは!
 
司法試験の受験なんて、ほんとうはしてなかったかもしれない!
見てみろ、この傲慢そうな彼の顔を!
愛情があったら、こんな顔を自分の妻にむけられるかい?
ずっと君をだまして、浮気をしてたかもしれないんだよ!?」
 
私は、とても怖くなって、パーヴォの顔をみつめました。
 
パーヴォはいいました。
「マカオのコンサートでね、君をはさんで、
僕と彼がにらみあっていたことを覚えてる?」
 
私がようよう答えました。「ええ、よく覚えてるわ。
あなたが私をとってもやさしく見つめてくれて、
それを前の夫がにらみつけたら、
あなたも夫をすごい勢いで、指揮をしながらすごくにらんだよね・・
私すごく、こわかったし、自分がとんでもない女だと、すごく落ち込んだわ」
 
パーヴォはやさしくいいました。
「君が自分を責める必要はないよ。僕は君のかわりに彼をにらんだだけだからね。
普通ね、愛する女性が、すばらしい音楽を聴いて、
嬉しそうな顔をしていたら、男はみんな幸せなものなんだ。
うれしいものなんだ。
自分がつれてきてやったのだと自慢気に思うものなんだ。
 
ところが、彼はうれしそうな君を、まずにらみつけた。
それから冷たい目で『フン』と馬鹿にしたような顔をした。
それから僕の事もにらんできた。
なんて無礼なやつだ、と僕はカンカンに怒った。
 
だから僕は、思い切り彼をにらみ返してやったんだ!
 
普通は大事なお客様に対して、僕はそんなことはしないよ。
でもね、僕たちの音楽をまったく聴こうとしない、
彼の態度があまりにも傲岸不遜でね、腹を立ててしまったんだ。
 
いつも彼はあんなに誰に対しても傲慢な態度をとるの?
あれじゃ、彼はトラブルメーカーだよ、どこへいっても。
チコ、君は彼と別れて正解だったんだよ。
 
君が彼と別れてから、僕のコンサートにやってきたら、
どんどん顔色が明るくなっていくのだもの!」
 
私はこの写真をパーヴォにみせました。
「これ、前の夫はひどく嫌う髪型だったのだけど、
東宝時代、広報室でお世話になった専務さんがいて、
その方が『チコ、君は仕事ぶりはとても優秀だよ。
だから自信をもって。そのかわり、髪型を、ちょっと
小林麻央ちゃんふうにしてごらん』
といってくれたの。
それで、うれしくてがんばって、こういうお嬢様風の髪型にしたの。」
 
するとパーヴォは、わぁ!と叫びました。
「とってもかわいくて、綺麗じゃないか!
笑顔も抜群にすばらしいよ!この髪型がいちばん君に似合うし、
とっても華やかですてきだよ!」
 
 

 
この写真、実は夫ではなく、母が撮ってくれたものだったんです。
そう話したら、パーヴォがますます納得しました。
 
「うむ。やっぱり、君は前のご主人といて、ずっと緊張してばかりいて、
萎縮していて、自分らしさを押し殺していて、悲しい思いばかりしてたんだよ。
高校時代の写真まではとてもはつらつとしているのに、
大学時代、彼と知り合ってからは、笑顔がほとんどないのだもの。
笑顔があるのは、すべて大学外で活動したアルバイトやテレビ出演の写真ばかりだ」
 
 
パーヴォは、「僕と君がどれだけお似合いのカップルか、
ちょっと実験してみようか」といって、この二つの写真をならべてくれました。
 
「ほらね!みてごらん!」
 
 
私はあっと叫びました。
「あ、これ、あなたと初めて出会ったときの笑顔と一緒だわ!」
 
 
パーヴォがさらにやさしく、私にささやきました。
 
「そうだよ、チコ!
君のとびきりの笑顔は最高に見る者を幸せにするし、
僕は君の笑顔が世界でいちばん好きなんだよ♡
君の笑顔がみられるだけで、
僕は満足だし、コンサートを一生懸命がんばるのは、
君の最高の笑顔がみたいからなんだよ。
だから僕の指揮は、君と出会ってから、全面的にかわったの!
わかるかい!君が僕に与えた影響のすごさが!」
 
私はうれしくなって泣きました。。
「パーヴォ、じゃ、私、あなたのこと、好きになってしまって、よかったのね?
前の夫と離婚してよかったのね?
みんなは『あんなにいい旦那さんと離婚するなんて、かつらぎはとんでもない女だ』
っていったわ?」
 
パーヴォは痛ましげに私をみつめました。
「ほんとに、チコはつらかったね。音楽療法の時も、
前のご主人からうけた、ひどい仕打ちをいっぱい話してくれたね。
でもそれは、前のご主人を庇おうと思って、
君がパパにもママにも、だれにも話せなかったことだったんだよね。
でも、いいんだよ。チコがとてもやさしいひとだという証明なのだからね。
 
でも、前の夫が君に対してしたことは、
本当に許せないことだよ。
この写真だけじゃない、僕が許せないとおもってるのは。
 
おそらくね、巨大掲示板に、ずっと君のことを誹謗中傷しつづけていたのは・・・・
前のご主人だよ。
君のパパもママもそう思ってたみたいだけど、
僕も、彼の写真の表情を見て確信した。
彼は、君を憎んでるね、絶対に。
君に対して、今もなおひどくゆがんだ支配欲をもってるんだね。」
 
私は、茫然としました。
まさかとはおもっていたけれど、はるちんが・・やさしかったあのはるちんが・・。
「前の夫はいったわ?『巨大掲示板なんて、便所の書き込みだからきにすることはないさ』って。」
 
パーヴォはいいました。
「でも、僕のことだけじゃない、君が劇評を書き始めたころから、2ちゃんねるで
君への攻撃がはじまったのだろう?そして、ご主人は君が劇評を書くのを反対していたのだろう?君が好きな役者さんが増えるたびに、スレッドがたっていったんだろう?まるで君の動向を全部しってるみたいに」
 
私は泣きました。「ええ、でもそれはその役者さんのファンがやってるんだとおもってたわ」
 
パーヴォはつづけました。
「その可能性もなくはない。
でも、継続して一人の女性をこんなに20年近く巨大掲示板でおいつめるなんて、
ほんとにそれはひどいストーカー行為だし、りっぱな犯罪行為だよ。
それに、この掲示板にかかれたことで、東宝は君を要注意人物扱いにし、
やがて、大変な病気に追い込んでしまったのだ。
前の夫がもし書き込みの主犯だったとしたら、君の人生を破壊した張本人だよ。
僕は絶対に彼を許せない!」
 
私はいいました。「まず、巨大掲示板に発信者情報を開示させるわ。
それから前の夫とのことをどうするか、かんがえるわ」
 
パーヴォは毅然としていいました。
「まずいえるのは、前のご主人は、君を馬鹿にしこそすれ、君をまったく愛していなかったし、尊敬もしていない。君の前ではいい夫を演じていたかもしれないが、
自分の会社や裏で、君をだまし、誹謗中傷していた可能性は大だ。
それにそもそも、この病気になる前に、彼は会社で法務担当になったんだよね?」
 
私が思い出しました。前の夫が私に言った言葉を。おもわずぞっとしました。
「ええ、彼はこういったわ。『ともちゃん、もし僕と法律的なことで争うとしても、それは無駄だよ。僕が徹底的に、君をつぶすからね』って」
 
パーヴォがうめきました。
「なんて異常な奴だ。そんなこと、普通愛する女性にいうか?
ああ、ほんとうによかった。君が彼と離婚して!
でも、これからはいろいろな意味で気を付けてね!
彼は異常心理の持ち主だよ、完全に。
君を憎んでいるが、君への抑圧は押さえられないんだ。
自分のストレス発散の場として、君を巨大掲示板で貶め、辱めているんだよ!」
 
「早く発信者情報を開示させないといけないね。
でないと、前の夫は、また君にひどいことをするかもしれない。
去年の暮、君に酔ったふりをして、暴力をくわえて警察沙汰になっているが、
警察も、おそらく彼の異常性に気づいているよ。
だから前の夫を厳しく追及しているし、書類送検もしているし、
君へ一切の接触も禁じているし、
君へ一切ちかよらない、という誓約書も検察庁でかかせているんだと思う。
時間の問題かもしれないから、
とにかく、君は、もう、前の夫を『はるちん』だなどと呼ばず、
彼のことは一切わすれて、とにかく彼をシャットアウトすること。
彼のお母さんもだし、彼の熊本の親戚のことも忘れること。
 
そして、このことをブログで書くこと。」
 
私が「えっ?いいの?大丈夫なのかしら?」
と戸惑うと、パーヴォが力強くいいました。
 
「このブログの影響力を、彼は全く知らないんだ。
だから、ひどいことを平気で巨大掲示板で書き散らかしていた。
彼にしてみれば、確かに便所の書きこみだったのかもしれない。
でも、前の夫が君に対してした行為は、
DVどころじゃない。大変な人権蹂躙だし、
君の人生を破滅させようとしたんだ」
 
「自分は法務担当として知らぬ顔をしながら、
手を汚さず、合法的に、君を社会的に抹殺しようとしたんだよ!
だから、僕としては、
彼を君自身の手で、罰することが、彼を君から手をひかせる
いい手段だと思う。だからブログに書くべきだといったんだ。
 
あとは、君が心をつよくもって、
勇気をもって、弁護士や警察に事情を話すこと。
そして、僕を信じていけるようにしなくちゃね!」
 
 
 
パーヴォは穏やかに、私に言ってくれました。
「すべては、この一枚の写真から始まったんだ・・・
僕たちの出会いは。
君を覆っていた、おそろしい運命の暗闇は、
僕がきっと晴らしてあげる。
もう二度と、君を悲しい目にも遭わせないし、
君の心の傷を治してあげる。
 
だから、いとしいチコ、
どうかいつもかわいらしい笑顔で、僕をみつめていて。
そして、勇気をもって、僕たちは前に進み、
いっしょになり、結婚しよう!」
 
・・・・私は、ずっとうれしくて、泣いています。
つらい、つらい日々でしたが、
ようやく一筋の光が差し込んで、
パーヴォというやさしい奇蹟が、
私を包み込んでくれている喜びを感じてます。
 
愛してる、パーヴォ。
私を、地獄からすくってくれて、
本当に、本当に、ありがとう・・!!!