前回→■流れ■⑪最盛期(9)シャント術予定日■2009.4.28



ドレナージ抜管、そしてシャント術中止…
と、そこまでのゆるやかな上り坂は
一気に急な坂に転じたのですが、

ドレナージを抜いたことにより、
思わぬ福音がありました。

ドレナージを頭から出しているがゆえに
頭の高さを変えてはならず、
ずっと寝たきりだったのですが、
ドレナージを抜いた4月27日、
この入院生活の中でも大きな動きがありました。

バルーンがうまく流れず、詰まっているような感覚が
あり、ちょくちょく管を交換したりしていたのですが、
4月下旬の尿道感染のこともあり、
病院側はあまり交換に乗り気ではなく、
バルーンのカテーテルから吸いとったり
していましたが、
なかなか具合はよくなく…

以前バルーンの管を抜いた状態で
排出に成功しているので、それを
もう一度試みたのですが、失敗。。

尿器なんて到底無理でした。

そんな折のドレナージ抜管で、
頭を起こしてもいいよ、ということになったので、
筆者のほうから「ポータブルトイレはどうか」と
提案してみたところ、
担当医に指示をあおいだ看護師さんが戻ってきての
一言は
「トイレ行っていいって」でした!!!

ちなみにポータブルトイレというのは、
読んで字の如し、洋式便器に足がついてる
ものです。
椅子の座面が便器になっているというか…。。
すべるといけないので足にタイヤはついていません。

かくして、3月16日深夜(17日未明)に入院して以来、
実に1か月半ぶりに、臥床の状態から座位へ…
寝たきり生活からおさらばしたのです。

最初看護師さんに支えてもらって上体をまず起こし、
そこでしばらく沈黙……

1か月半ぶりに頭が高い位置に来たのです、
さすがにふらふらしました。

血の流れが落ち着くのを感じながら、
足をベッドのへりから降ろし、靴を履かせてもらいます。
このときはまだ自分でかがんで履くことができませんでした。

そしてこんな急展開を予想していなかったので、
靴は、入院当時履いていたごく普通の、薄いヒールの
靴しかありませんでした。
寝ている時は裸足なのでひとまずそれを履き、

看護師さんに腰と肩を支えてもらい、せーので
ベッド柵につかまりつつ立ち上がります。

そしてその場でくるっと半回転し、
車いすに腰をうずめます。

足置きを出して足を乗っけて、
ストッパーを解除して出発進行。

トイレまでの距離、2mもないのですが、
すごくゆるやかで長い道のりでした。

同時に、自分のいた個室が、案外狭かったことを
感じました。

当時はまだ外転神経麻痺が残っていて、
最盛期にはハッキリとものがダブって見えましたので、
ワイドの感覚はすごく広く見えたのでした。

しかし実際は、その部屋は90cm幅くらいのベッドと
その両脇に1mあるかないかのスペースだけの、
こじんまりとした個室でした。

話が逸れましたが、
やはり、重力の流れがあると
うまくいくものでして、
無事用を済ませ、
手を洗うため、洗面所へと連れて行ってもらうと、
鏡に映った自分の姿を見て笑ってしまいました。

クリッピングの手術以降ずっと寝たきりで
ごろごろとしているうちに、
髪の毛が絡まって団子状になり、
上に巻き上げてソフトクリームのようになってしまっていました。

やっと笑顔が出たということで看護師さんも
よろこんでくれました。

そして、せっかく車いす乗ったから、といって
スタッフステーションまで連れて行ってくれました。
今まではずっと、ベッドかストレッチャーの上で
寝た状態で横向きに見るしかなかった
スタッフステーション。
思っていたよりは奥行きがありませんでした。

視界の変化というものは面白いものです。


その後、頭痛も心配しましたが、
ほとんど起こらなかったので、
夕方、少しベッドの角度をつけて、
状態を少し高くしていました。

そうしたらさすがに、
30分ももたずにリタイア。
頭が痛くなってしまいました。

仕方がないので
痛み止めの服用薬を飲んで、
また角度をまっ平らにして休みました。

その日の夜、普段ずっと使っていた
痛み止めや座薬を使うか迷ったのですが、
使うほどでもないかな、と思い、
結局その夜は一晩、痛みはほとんどありませんでした。

そしてまた、次の日、その次…となっていくにつれ、
気づいたことですが、
抜管してから、まず、頭の痛みがほとんどなくなりました。
ドレナージそのものが、頭にとっては「異物」なわけですから、
頭が痛くなってもおかしくありませんね。

そして、ずっと引いていたのどの痛みも
おさまりました。それまでずっと
全身麻酔の管の後遺症だと思っていたものが、
実はいつからか、ドレナージの管による副作用的な
ものにすり変わっていたのでしょうか。

そして、術後、左耳がすこし聞きづらいというか、
プールに入って耳に水が入ってしまった時のような…
というか、
曇った感じで、ほわほわしていたものが、
取れてすっきりしました。
これは明らかに管のせいですね。

ドレナージによって余計な髄液を排出するということは
いいことなのですが、
それによる締め付けはいろいろあったのでした。
当時は気づきませんでしたが…

そしてさらにこのあと、急展開は続きます。