プチ『黒い巨♂』4゚・:,。☆
・・・つづきですよ。
樹 『これを預かってまいりました』 封筒を手渡した。
部 『ご苦労様、聞いてますよ。掛けて』
樹 『いえ、このままで』
総務部長とは、会社の宴会やクライアント接待の席で何度か顔を
会わせている。ここにいる秘書の女性もいつも一緒にいたと思う。
部長が読み終わるのを見計らって、
樹 『それに印鑑をいただき、持ち帰るよう仰せつかっています』
部 『大袈裟だよね。はははっ、そういうやり方なんだろうね』
部長には確か、音楽大学に行っていたお嬢さんがいたはず。
こういう時は、やはり娘の話か。危険だけどいってみるか。
樹 『部長、お嬢さんは音大をご卒業なされたのですか?』
部 『あぁ、今年卒業してね。中学の音楽の先生になったよ』
ふぅ~、なんて私は勝負師なんだ。
留年や就職浪人でもしてたら、その後言葉が続かなかったわ。
樹 『それはおめでとうございます。公立中学ですか?』
部 『そう、○○○のね』
樹 『教員採用試験を一度で受かったのですか?』
部 『本人もまぐれだって言ってるよ、あはははっ』
樹 『それは凄いですわ。私の友達はもう2回落ちてますから。
確かもうすぐ試験のはずです』
部 『なかなか難しいみたいだねぇ~。
そう言えば、君も教員の免許を持っていたよね?』
部署違いの平のOLのそんな事を知っているのか?
私は会社で真由美にしか喋っていない。
あと知っているのは、履歴書を見るであろう、うちの部長くらいかと
思っていた。顔に似合わずキレる人なのか?
樹 『あっ、恐縮です。私は教える自信も採用試験に受かる自信
もありませんでした』
部 『そのお陰で、会社に入ってもらったのだからよかったよ』
樹 『ますます恐縮です』
秘書の女性が怪訝な顔で見ている。早く帰れと言わんばかりだ。
彼女は確か、有名お嬢様女子大出身。
清楚で知的よぉ~。でも、前の接待でもただただ座っちゃって、
”お酌したことがないのか?気の利かない女だ”って、
陰口たたかれていたわよぉ~。苦手なのね、しかたないわよ。
きっと、大学でバイトをする必要もなかったのね。
いっぽう私は、夜のバイトからキャンギャル、イベコン。と、あなたと
は男も女の修羅場も、見てきた数が違うのよ。
そんな私もどうかと思うけど(笑)
でも、もう少し臨機応変に会話もできないといけないんじゃないの。
秘書の仕事は出来そうだけど、それだけじゃ出来る女って言えな
いんじゃないかしら?人の痛みもわからなそうよ。
樹 『申し訳ありません。お時間を取らせてしまいました』
部 『いや。・・・私はテレサ・テンが好きでね。君の「愛人」はよかったね
今度は「つぐない」でも聴かせて下さい(笑)』
樹 『あはっ、本当に恐縮です。部長の「いとしのエリー」と「東京砂漠」
もとてもよかったです。また、お聴きしたいです』
部 『わはははっ、いやいや』
また、彼女に怪訝な顔をされてしまったわ。はいはい、帰りますって!
でも、部長の「いとしのエリー」と「東京砂漠」をコンマ3秒で思い出す
ところが私のすごいところよ。
私はこれから、企画の女トリオは並じゃないぞ。って思わせなきゃいけ
ないの。悪いけどあなたに構ってる暇はないわ。
しっかりね。お嬢様。
樹 『確かにお預かりいたしました。失礼します』
部 『ご苦労様。あぁ、○○君(麗子のこと)をよろしく頼みます』
樹 『はっ?はい』
よろしく頼むと部長に伝えてくれ。という意味だろうが、なんか変な
感じがした。
部長室を出ると、またジロジロ見られた。
だから、見るなって!あぁ、次はもっと嫌な秘書課だぁ~(笑)
麗子の姿がなかった。
総務部のフロアを出ると、柱の影で麗子が手招きをしていた。
・・・つづくのぉ~。