恋バナ☆ずっと②前から好きでした。(13-28)
・・・つづきです。
翔が帰国後、Ⅹ氏と逢った。彼の様子は少し変だった。
ジュリ「お仕事で悩み事?・・・それとも・・・別れ話?ははっ」
Ⅹ 「あはははっ。・・・逆だな。彼は帰って来てるの?
海外は何処だか聞いてなかったね」
「・・・シドニーよ。帰って来たわよ」
「会ったの?」
「なぜ、そんなこと聞くの?」
「申し訳ないと思ってる。とてもいい彼みたいだ。コンパの時君が
盛んに自慢してた。その時から嫉妬してたよ」
「あはははっ、バカみたい。私達、ちゃんと付き合ってなかったのよ」
翔がシドニーに行かなければ、コンパにも行ってない。この人にも会うこと
はなかっただろう。こんなことにならずに、楽しい日々だったかもしれない。
でもこの時、私は初めて思った。
私のせいで人生を狂わされてしまったのは、この人のほうかもしれない。
Ⅹ氏は仕事でも、こんな会話で依頼主の逆の思いを引き出しているの
だろうか?
「・・・僕はたぶん、君を幸せに出来ない」
「えっ、・・・わかってるわよ・・・」
聞きたくもない言葉だった。本当なら 『そんなことわかってるわよ!
いまさら何言ってるのよ!』 と怒鳴りたかったが、抑えた。
「でも・・・君を失いたくない。悪いと思っていてもどうにもならないんだ」
「・・・・・・」
怒りモードに入りかけていたので、ピンとこなかった。
それが本心ならば、叶わぬ恋とはいえ、私は求愛されているのだろうし、
喜ばしいことなのだろう。
人生では、あきらかに方向性が間違っているだろうと思うことでも、
どうにもならないことがある。
恋愛でも仕事でも、自分の描いたビジュンの大通りをまっすぐ突き進める
人はそうはいないだろう。
皆、どこかで迷い道に入ってしまう。その時、自分の大通りに戻れる感覚
の優れた、実行力のある人が、成功したり幸せになったりする人間なのか
もしれない。
特に恋愛では、遠い先の幸せを見据えて、思い通り進むなんて出来ない。
そんなことをしても楽しいものではないし、必ず迷うだろう。
先を見据えない今も大切なのだ。多くの偶然がリンクして出来る必然(運命)
のためにも、ひとつの偶然の『今』も大切なのだ。
なんにしても、私は今、目の前にいるこの人が好きだ。
それは、どうにもならない事実だった。
「あなたはそれでいいの?最愛の奥さんを裏切っているのよ」
「今はそんな事考えられない。好きなんだ、君を失いたくない」
何も分からなかったが、ひとつだけ、あれほど理解出来なかった不倫という
切なくて、叶わぬ恋に走る同姓の気持ちが分かった。
このハンパではない包み込まれかた。皆、この感覚に魅了されてしまう
のかもしれない。
簡単に言ってしまうと、『独身ならよかったのに』じゃなくて、『独身じゃない』
からよかったのだ。
やっぱり魔法という言葉が浮かぶ、この人は消えかかる魔法を掛け直して
いるようにも思える。優秀なのか、まぬけな魔法使いなのかは分からない。
「Ⅹさん、私は目の前にいるあなたのことが好きよ。一緒にいてほしい。
そして、今は目の前にいる私を愛して」
ただ、魔法は心地よかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
久しぶりに、翔から電話があった。仕事中だったが、ぎりぎり昼休みだったので
取ることが出来た。
「もしもし、ジュリ」
「翔、どうしたの?仕事中に珍しいわぁ」
「今、成田なんだ。」
「えぇ?」
「また、半年程海外に行く。今度はニューヨークだ」
「はぁ~?今からなの?なんで言ってくれないのよ」
「平日昼間だとわかっていたし、休ませちゃ悪いからな。もう搭乗するから
後で連絡する。元気でな。」
「ちょっと!なんでぇ~」
運命の赤い糸はますます見えなくなっていた。
・・・つづく。