才能に恵まれたその男は忙しい日々を過ごしていた
国内はもとより海外でも才能の表現である作品を世の中に送り続けた
どれほど華やかな世界に身を置いても、その作品に描かれる主人公達は、かつて夢以外に何もなく、ひたすら夢を追い続けたあの日の自らの姿でもあった
その作品は多くの人々の共感を得、支持された 男は母の誕生日と母の日には、忙しいスケジュールを縫って必ず母親に会いに地元に戻って来た…母の好きな花束を携えて
花束がどんなに豪華になっても、母はその男が少年だった頃にもらった花以上は決して受け取らなかった
男は冷えきった部屋で一人静かに過去を思い出していた…
初めて母に贈った花は、男の才能が認められた高校生の頃、その作品に対して贈られた花束を母にそのまま渡したものだった
男は静かに思い出していた…