待ち合わせしたカフェに、おとなしくザックスは待っていた。
注文もそこそこに!テーブルに着くなりシルビアはザックスの胸元を握りしめて締め上げた。
「お前は一体何をしているんだ!」
あまりにもの勢いで迫られたので、少し怖気ついたザックスは、声をうわずらせて答えた。
「なにって?仕事?」
「違う!クラウドをほったらかしにしてなにしてるんだ?と聞いているんだ。」
「ほったらかしになんかしてねーよ。」
ムキになって反論を返すザックスを冷ややかな目で見て、運ばれてきたコーヒーを一口口にする。
「なあザックス、お前はクラウド事どう思ってるんだ?」
先程とはうってかわって静かに口に出した女史に戸惑いを感じつつ、否定した。
「どうって…」
「古代種の娘…エアリスといったか?」
その名前を出されてザックスは心穏やかではいられなかった。まあ、それが聞かれた答えだと言っても過言ではないだろう。
「だから、なんで先生がその…エアリスの事知ってるんだよ。」
不貞腐れた態度で口を尖らせ尋ねる様子は、まるで子どものようだった。そう、せっかく見つけたお気に入りのおもちゃを取り上げられた子どもそのものだ。
「あ?ん、まあ。彼女は神羅も監視対象にしている人物だしな。で、ソルジャーらしき男が古代種に親密に接触していると情報が上がったらしい。」
「はあ?じゃあ俺の事神羅にバレてるのかよ?」
「まあな、そもそもそういうことになると想像はつかなかったのか?この馬鹿!」
「はぁ~」
「下の感情の方が勝ったんだろう?どうせ。 」
また口を尖らせとムッとしている。
「まあ心配すんな。お前に関しては既にソルジャーとしての能力は既に失ってると情報を流しておいた。」
ホッと安心した顔をしたザックスに追い打ちをかけるように話す。
「ザックス、今日私はクラウドの往診に行った。お前何日クラウドの元に帰っていない?」
「毎日帰ってるよ。今日は忙しくて帰れなかったけどさ。」
「忙しくて?」
「ああ。」
「今日、クラウドの診察した時にクラウドからアンモニア臭がしていた。確認したら下着が汚れていた。それに、腰のあたりに褥瘡が出来かかっていた。本当にお前はクラウドの世話をしていたのか?」
「褥瘡?」
「床ずれだよ。」
「嘘だ!毎日見ていたが気がつかなかったぞ?」
「嘘だな。」
「なんでそう言い切れるんだよ!」
「ザックス…クラウドの意識が回復傾向にあること気がついてるか?」
「え?」
「私は最初に言ったはずだよ。魔晄中毒患者は、意思表示が出来ないだけで意識はあるはずだと。今日それが証明された。これも毎日見ていれば気づいたはずだ。」
「…」
「今日30分程クラウドと会話をしてきたよ。」
「!」
「確かに手足は動かせないけど、瞳で会話が出来る。Yesは縦にNoは横。これで会話が成り立った。」
「クラウド、前に私が渡したチラシを見ていた。どうやらあの施設に入りたいみたいだぞ?」
「えっ?」
「あの施設、神羅のソルジャー廃棄施設だと調査結果が来ていた。私はクラウドに怒鳴ったよ、投げやりになるなとね。」
ザックスは、クラウド回復の話を聞いたからか落ち着きがなくなっていた。
「今のお前にはクラウドを任せるわけにはいかないな。しばらく私の知り合いの病院にクラウドを引き受けて貰う段取りを取ってる。ザックスはその間身の振り方を考えろ。じゃあ。」
そう言い捨てて、シルビアは自分の分と俺の分のコーヒー代を数ギル置いて立ち去って行った。
***
確かに、ここ最近クラウドの存在が重くのしかかってきていたのは、正直言って当たってる。
意思疎通が出来ない関係に疲れ、先行きも見えないこの生活にも疲れてていた。
そんな時出会ったのがエアリスだった。彼女と話していると、そう言う事を全て忘れられて、昔の俺でいられたんだ。
会話が出来ることの有り難みが凄く感じられた時間を過ごせた。
彼女と別れて家に帰ると、朝家を出た時と同じ格好でベッドに腰掛けているクラウドを冷ややかな目で見ていた自分がいる事にも気がついていた。
前までは風呂に入れてやっている時も、声かけながらやっていたのが、まるで芋を洗うようにゴシゴシと洗うだけになっていた。
やるせ無くて酒飲んで帰った時なんか、クラウドに酷い言葉を投げかけた記憶もある。
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「はぁ…いい加減反応示せよ。」
反応を示さないクラウドに投げかけた言葉だった。
そしてその足で、エアリスの所に行ったんだ。
聞いていたんだ…。
あんなに大切だったのに、他の誰よりも愛していたし守ってやりたかった。
なのに俺は…。
褥瘡も気がつかなかった。意識の回復にも気がつかなかった…。確かに今の俺にはクラウドの側にいることは許されないかも知れない。
俺は、シルビア女史に連絡を入れてクラウドの保護を頼んだ。
女史は、快く引き受けてくれたが一つだけ条件を出された。自身が気持ちの整理が完全に出来るまで一切クラウドに会わない事。
俺は自分からクラウドの手を離してしまったんだーー
2013/12/9