本日最後の依頼を終えて店舗兼住居に戻って来たのは、PM8:00を過ぎていた。
汗をかいていたのでシャワーを浴び、夕食を取ろうと冷蔵庫を開けると何もないー。
(あー、食材きれてたんだった…。まあ一日ぐらい食べなくても構わないか…)
肉体改造のおかげか、食事はそう重要な事ではすでになくなっていた。
「明日は遠出しなくてはいけないし…今日はこのまま寝るか。」
そう思い、飲んでいたビールをグイッと一気に喉に流し込み、寝室に向かおうと足を向けた時、ドアをけたたましくノックする音がしてドアが開いた。
「クラウド~!夕飯持ってきたわよー」
賑やかな声を出しながら部屋にやってきたのは、マリンとシャインだ。
「冷蔵庫の中そろそろなくなる頃でしょ?どうせクラウドの事だから『別に食べなくたっていい』とか思って食べていないんじゃないかと、ティファが愛情込めて作ったのよ。ありがたく食するよーに。」
「マリン…だんだんティファに似てきたな。」
そう言うと嬉しそうに笑いながらマリンは、持ってきた食事をテーブルに並べながらこっちを見た。
「そりゃあね。何年も一緒にいればね。」
「ホント、口うるさい所もソックリ!」
飲み物を用意していたシャインが、横から口を挟む。
「聞いてよクラウド!今日もね、私がデンゼル兄さんと同じWROに入って兵士になりたいっていったら…」
「それはシャインが…。あっクラウド、どうぞ召し上がれ♩」
マリンは、俺に食事を勧めながらシャインの方を睨みつけた。
俺は、食事の手を止めてシャインの方に向き尋ねた。
「軍隊に入るつもりなのか?シャイン。」
俺にパンを手渡しながら、マリンが答える。
「世界を守りたいんだって。」
「世界を?」
「そう!クラウドみたいに英雄になりたい!んだって」
ほぼ食事も終わり、後片付けをしていたマリンは帰り支度をしながらため息をつく。
「だって、私はママの様に家に入って帰って来ない夫を待つ生活なんてゴメンだもの…!」
「シャイン!!」
いい加減キレたのか、マリンはシャインの腕を引っ張り、クラウド宅を後にしようとドアノブに手をかけた。
「クラウド、ゴメンね。ちょっとあの子今反抗期みたいなんだ…。反抗期を迎えられるなんて、世の中が平和になった証かもね。じゃあ、お休みなさい。」
慌ただしく出て行く二人を見送って、俺はベッドに倒れこんだ。
「ティファも大変だな。でも少し…少しだけだけど羨ましい。」
俺には手にする事が出来ない、望む事が出来ない『家族』という名の幸せーー。
何年か前に、俺は自ら手放したのだ。『家族』という幸せの象徴の一つを持つことを。
何故ならば、俺には一生を誓った大切な人がいるからーー。
その人はもう、10数年前にライフストリームの住人となってしまった。
友達のいなかった俺に、人の温もりの暖かさを教えてくれた人。
人を愛する強さを教えてくれた人。
俺を自分の命を捨ててまで、最後まで護ってくれた人。
もう逢いたくても逢えない、俺が唯一愛した人。
「ザックス…。」
アンタは夢の中ですら、逢いにきてはくれないんだなーー。
久し振りに、胸の中にふと湧いた寂しさを誤魔化す様に、俺はシーツを被り目を閉じた。