Their intentions
ーそれぞれの思惑ー 23 *シリアス
魔王部屋を覗くと、まだ渋谷は眠っていた。
僕は、彼が眠っているのをいいことに昔話を呟いた━━
「さっきね、眞王廟に行ってきたよ。入り口の僕の何倍も高さがある扉が、僕の侵入を拒んでいる。多分、気のせいだろうがそう感じさせる何かがあるんだ、それは僕の魂の過去に関係があるのは間違いないだろう。」
渋谷、君には僕と彼との事を話しておかなければならないね。
僕の4000年の記憶の中の眞魔国での部分で、この眞王廟の記憶はかなり占めている。
ここで、何をするにも無茶をする王の為に最良の道を導き出す為に知恵を絞り対策を練った。
ある時は「非道」と囁かれるときもあった。けれど、王の為、王が守りたいと願うこの国の為には、どんな事でも成し遂げた。
それもこれも、義兄であり最愛の唯一無二の王の願いを叶えるため。
彼は言った。
「いつの日か、人間も魔族も分け隔てなく幸せに暮らす世界を作りたい」
と。
僕も常々、争いはなにも生み出さない、寧ろ憎しみだけ大きくしてしまうだけだと思っていたから、彼の考えに同調し叶えるべく、自分の持つ知識を惜しみなく捧げた。
彼はそうした僕の行いを殊のほか喜んで受け入れた。
僕の提案する事項は、全てが彼の納得するものではなかった為、自分と異なった意見を出された時は、子どものようにふてくされる面もあった。
しかし、その意見を渋々ながら受け入れ己のものにし良好な結果を招いたときは喜び、
「さすがは俺の大賢者」
と僕を褒め称えた。
皆が彼から賞賛の言葉を受けたいと願い続けている中、そう誉めて貰えることは、僕にとっては凄く幸せな事で、唯一自分という者の存在を確認できる瞬間でもあった。
何故ならば、僕はあの眞王に会ったと思われる4000年前のあの日、それまでの記憶が全て失われ、自分が誰かという事すら忘れていたのだから。
本当に幸せな日々だった。人に仕えるということ、そしてその仕えている人物の喜ぶ姿を見ることが出来ると言うことはとても素晴らしい事だと知ったんだ。
※※※
しかし、そんな二人の関係も少しずつ変化が起きていった。
あの日が来なければ、きっと僕はいつまでも彼の側で彼の頭脳の役割を果たしていただろう。
創主を打ち負かした彼は、絶大な力を手に入れ、元々の性格でもある高飛車な面が出始めてしまった。
段々と僕の意見も聞かなくなり、真剣に対策を練ったものを、鼻でフンと笑い飛ばし採用しなくなった。
彼は耳障りの良いもの、自分に都合の良いものしか受け付けなくなったんだ。
創主を倒してから、彼の元にはあわよくば腹心の臣下に収まろうと、心に一物を持った人々が集まるようになっていた。
彼らは、眞王の喜ぶ言葉を言いまくったんだ。
眞王も人の子だから僕のように苦言を呈するより、自分をいかに立派な王か称えまくってくれる言葉の方が嬉しいのだろう、そちらの言葉しか聞かなくなったんだ。
今思うと、彼も創主と戦い多少創主のマイナスパワーを受けてしまっていたんだろうと思う。
彼は露骨に僕のことを避け始めた。
彼は創主を封じ込めた禁忌の箱を争いごとに使おうとした。
それも国を守るための争いではなく、自分の権力の行使のための争いに。
彼にそれをそそのかした輩がいたんだ。
僕達臣下はその人物を眞王の側から引き離そうと努力はしたんだけれど、眞王がそれを許さなかった。
今の魔族たちが崇め奉っている眞王が、実は野心家の一臣下に傀儡にされつつあったんだ。驚きだろう?
昔からの臣下たち、今の十貴族のご先祖様達は反発した。
直接進言した者もいた。それでも眞王は考えを改めなかった。
僕もさすがに万策つきて、彼に自分の考えを訴えに言ったがダメだった。
それだけじゃない、彼は僕に箱の有効利用方法を画作してくるようになったんだよ。
これには僕も激怒した。
「この箱を戦に使うなんて許される事じゃない。最近の君はおかしい。前のこの世界の平和を願っていた頃の君に戻って欲しい」
と、何度も懇願した。
しかし、彼が目を覚ます事はなかった。
僕はこの危機を回避するために、僕の独断で彼から箱を遠ざける事に決めた。
二つの箱を眞王が探し出す事が出来ない所に隠したんだ。
もちろん彼には極秘でね。
その事を知った眞王は怒り狂った。
それこそ今まで築き上げてはきた関係が壊れるくらいに。
そして、最終的に彼が僕に下した命令が
『俺の目の前から消えろ!そして二度とこの地を踏むべからず』
君も知っているだろうけれど、王の命令は絶対なんだよ。
だから、僕はこの国にいられなくなった。
その頃の僕はある研究に没頭していて、ちょうどその成果を試す機会を探していたのもあって、それを使った。
そう、異世界へのスタツアだよ。
箱をこの世界に全て置いていくと、またいつか悪用する輩が出てくる。
だから僕は箱のうち二つを持って、眞魔国の外れの海から地球に渡ったんだよ。
眞王が、昔の自分を取り戻してくれるように━そう祈って。
※※※
2012/2/24