Their intentions
ーそれぞれの思惑ー 10 *シリアス
「トントン、失礼します。グウェンダル閣下、ギュンター閣下がお呼びです。」
やはり来たか。
***
この男がそう感じたのには、理由がある。
一刻前程に、猊下がこの部屋に訪ねて来た。
「フォンヴォルテール卿、君はどっちの王につく?時間が余りないんだ、正直に言って欲しい。」
「私は、今の魔王で満足しているのでね。それにあれを立派な王に育てないと、今までの私の苦労も報われまい?」
眉間の皺が少し緩くなりつつ、彼らしい言い回しで現魔王に忠誠を誓った。
「多分、フォンクライスト卿かフォンビーレフェルト卿が君を呼びにくるだろう。」
「何故だ?」
「君の末弟くんと王佐殿は、すでにあの人に操られているといっても過言じゃない。」
「なんだと!」
その男はまるで信じられないという顔で僕を見上げたが、そんな事にかまっている場合じゃない。
とにかく一人でも味方が必要だ。
それも強い、僕に何かあったら渋谷を命懸けで護ってくれる人物が。
「君は相手が弟でも心を鬼に出来るかい?実は、ウェラー卿も違った形で呪縛を掛けられていると思う。」
「君は弟を倒せるかな?」
軍人らしい目つきを見せて、彼ははっきり断言した。
「それが正しいことならば、遠慮せず倒せる。また正しくなくてもそれがこの国の為になるならばな。」
「ありがとう」
***
「今、手が離せない。こちらにくる様に伝えろ。」
「わかりました。」
眞王陛下か…相手が悪過ぎる。我々魔族にとって、眞王陛下と双黒の大賢者は崇拝の対象だ。
有事の際も、眞王陛下に誓いを立てるほどだ。
しかし、その眞王陛下の代弁者でもある魔王陛下もまた、我々の王だ。
特に今度の魔王は、今までの魔王の誰もがやろうとしなかった、人間との共存、それも平和的手腕で行おうとしている。
誰もが先の戦で、誰もが傷付き、大切な人を亡くし虚しさだけが残るという結末を迎えた。
戦争が無くなるならそうなる方がいいに決まっているが、誰もがそんな事は絵空事だと取り合わなかった。
しかし、あのユーリはそんな不可能と思える事を真面目に叶えようとしている。現に少しずつではあるが同調する人間の国も出てきた。
私は、そんなお子様魔王の夢についていこうと心に決めた。
「猊下め…私の気持ちを確かめたな。食えない男だ。」
そうほくそ笑んでいると、扉を軽くノックする音が聞こえた。
「さあ、始まるかーー」
私は、今にも開くだろう扉をジッと睨みつけた。
***
2012/2/9