Their intentions
ーそれぞれの思惑ー Ⅷ*シリアス
気がついたら、そこは魔王部屋の広いベッドの上だった。
まだ完全に覚醒していない頭を動かし、現状を確認する。
「そっか、朝食の時に…」
俺は大きなため息を漏らし、今後について考え巡らせた。
とにかく今のこと状況を打開しないといけないわけで。
へなちょこキングであれ、俺はこの国の王だ。いくらカリスマ性ハンパない眞王が相手であっても、この国の未来を作るのは俺だ。誰にも譲らない。
結局、ギュンターとヴォルフは俺の元から去った。仕方がないよな、あいつらにとって眞王は神様の様なもんだし。
そう言って二度目の大きな溜息を漏らした時、やけに明るい声が聞こえてきた。
「渋谷ー、ため息つくと幸せが逃げてくよ~」
「村田…。溜息もつきたくなるだろう?こうなったら」
村田は俺の為に用意されていた朝食のサンドイッチをひとつつまんで口に運びながら言った。
「きみ、ウグッらしくまいねぇ」
口の中に物を入れたまま話してはいけません。ガキの頃に習わなかったのか?
「村田、なにいってんのかわかんねーよ。それにそのサンドイッチ俺のだし」
「ごめんごめん。誰かさんが朝食時に設問タイム始めちゃったんで、食事取りぞこねたからお腹すいちゃってさ。」
「すみませんね。」
俺は、嫌味ったらしく不満を訴える村田に同じ様な口調で謝った。
口の中をなくす為か、保温ポットに入っている紅茶を一口飲んで、村田が話し始めた。
「今、君のフォンビーレフェルト卿の所に話を聞きにいってきたよ。」
せっかく用意してくれたのだからと、サンドイッチに手を伸ばそうとしていた俺は、村田のその言葉を聞いて手がとまった。
「何を?今回の事についてか?あいつは何て言ってた?」
村田は普段見せない大賢者の顔をして俺にいった。
「結論から言うよ。彼は諦めた方がいい。」
「な、何を突然言い出すんだよ!ヴォルフが俺を裏切るとでも?」
「うん、正確に言うと彼の意思ではないかも知れないけれどね。王佐殿も同じく。」
「僕は、彼に本心を聞こうと彼の部屋を尋ねたんだ。少しでも事情の整理をしておきたかったからね。」
「でも、彼は頑なに口を開かなかった。仕方ないから、ちょっとだけ頭の中を覗かせてもらったんだけれど…」
俺は少し怒りが湧いてきて、今にも目の前の親友に殴りかかりに行くところなのを必死に押さえ込んで、話の続きを促した。
「そんな事が許されるのか?人の頭の中を勝手に覗くなんて!」
「別に勝手にじゃないよ。ちゃんと彼には許可をとった。」
「彼の精神にプロテクトがかかっていたんだ。かけたのは多分…」
喉がゴクリと動く。
「かけたのは?」
「眞王だ。」
***
俺の中で小さな破壊音が聞こえる。俺は、頭の中で絡まった毛糸の様になっている村田の発した言葉を、解きほぐそうと頑張ってみたが
オーバーヒートしそうなぐらい、熱くなっている現在、抑えきれる自信がない。
「眞王が何だって。ヴォルフをどうしたって?」
「……どうして、あいつは俺を…」
村田が、暴走しようとする俺を見て慌てたのか、必死に宥めようとして俺を自分の腕の中に抱き込んだ。
「渋谷っ!落ち着けっ!」
ああ、頭の中に白い靄がかかりはじめた。やばいっ!
村田が触っている場所から、暖かい何かが溢れてきて、俺の身体を縛り付けた。俺を押さえつけているのか?離せよ!
藻掻いても剥がれないそれは、だんだんと俺の全身を包み込んだ。
その瞬間、眩い光が一面を覆い尽くした。
と、同時に太鼓の音が鳴り響き、いつものあの人が出てくるのを感じた。俺はそれっきり白い部屋に閉じ込められた。
「渋谷っ!おいっ!…なっ!」
魔力が渋谷を包み込んだと思ったら、渋谷の様子が変わった。
「余に何か用か?おれの大賢者殿」
この瞬間、眞魔国第27代魔王渋谷有利が消えた。
***
2012/2/8