ー僕は渋谷有利が欲しかったんだー
帰郷
あの過酷な聖砂国での滞在を終え、ようやく地球に戻れると、安心したのも束の間…何故か、事故で海に投げ出されたと勘違いして、飛び込んできたフォンヴォルテール卿と、
高校一年生でも実は魔王っていう、経歴の持ち主である親友の渋谷有利と、誰かさんのおかげ?で、何故か4000年も記憶を維持し続け今に至る、大賢者と呼ばれる僕、村田健は
何故か、地球どころか眞魔国の裏側にあるらしい、ダルコという国に流れ着き、刑務所で過ごすという
普通の高校生ではまず経験しないだろう日々を送って、今ようやく眞魔国に帰るための船に乗っていた。
(体の中から、何かが湧き出てくる感じがある。そうか…近づいているんだね。)
(僕は、村田健だ!それ以外でもそれ以上でもない。君の待っている双黒の弟ではないんだよ。)
僕は、過去の人物に引きずりこまれそうな感覚を、無理やり押さえつけるために、大きく深呼吸を繰り返した。
僕は気づかなかったんだ。
そんな僕を、もう一人の双黒の持ち主である親友がずっと見ていた事を…。
「おい!村田?どうしたんだよ!」
「えっ?し、渋谷?」
「えっ?じゃないよ!なんだよ!青い顔して。まるで…海に身投げでもしそうな雰囲気だったぞ!」
「そ、そう?」
「まだ体調がよくないのか?部屋に行って休んでいたほうがいいんじゃないの?」
いつもの明るい表情を曇らせて、じっと僕の顔を見つめながら話しかけてきた。
ダメだ。渋谷が僕の様子に気づくなんて…少し涙が出そうだ…
「ねえ、渋谷…君は僕の親友だよね?何があっても、それは変わらないよね?」
渋谷は鳩が豆鉄砲食らった様に、大きい瞳をさらに広げて答えてくれた。
「当たり前だろ!な、なんでそんなこと聞くんだよ!」
(ああ、僕はなんて幸せなんだろう…ようやく、本当のパートナーを見つける事ができたんだな。)
「だよね?あはは」
ーそう、僕は君という人間をようやく見つけて捕まえたんだ!絶対誰にも渡さないし、手放したりはしない!
例え、何千年も昔に別れた君主にですらねー
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