1996年福岡空港、ガルーダ航空DC10の離陸事故(1) | 空と歴史が好きな jukushi が 安全性について考えるブログ

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連日の DC10の話になります。

 

1996年、613日、福岡空港で離陸しようとしたガルーダ・インドネシア航空DC10型機が離陸を中断。

 

しかし、当該機は滑走路内で止まり切れず、オーバーランしてその後炎上する事故になりました。

この事故により、乗員乗客275名のうち3名が死亡、109名が重軽傷を負いました。

 

 

 

 

 

 

この事故の原因は、性能上、離陸決心速度=V1(ヴィーワン = 離陸中止するか継続するかの判断の目安となる速度。中止する場合は滑走路内で止まれる最大速度。継続する場合は最小の速度を過ぎていたにもかかわらず、機長が離陸を中止する操作を開始したことにあります。

 

飛行機は、離陸中にエンジン故障を生じても、速度 V1を過ぎていた場合は離陸を継続し、残りのエンジンで十分に安全に飛行できる性能を持っています。

 

逆に速度 V1以下で、 離陸を中止するという判断をした場合は、滑走路内で止まるために最大のブレーキをかけなければなりませんが、1秒でも遅れると停止距離は伸びます。

 

ざっくりとV1について以上のように書きましたが、実際は、毎回の離陸ごとに、離陸に必要な滑走路長からV1の値が求められます。

 

離陸中止の場合に必要な滑走路長と、離陸を継続する場合に必要な滑走路長が同じになる速度を

バランスドヴィーワン (Balanced V1) と呼び、機体の重さが軽い国内線のような場合は、離陸中止の場合でも、離陸継続の場合でも、必要滑走路長は実際の滑走路長より短く、どちらの場合であっても滑走路の長さに余裕があります。

 一方で、国際線の様に、滑走路長さをいっぱいに使っての離陸の場合には、ほぼ必要滑走路長がそのまま実際の滑走路長と同じぐらいになり、余裕はほとんどありません。

 

離陸速度、必要離陸滑走路長など、このあたりの説明は別途ほかの記事で詳しく書きます。

 

V1 が例えば 120ノット(約220km/hr)だと、その付近では1秒間に約60mほど走ります。

更に加速中なので、離陸中止する場合、1秒の判断の遅れは、その分の残り滑走路の余裕をかなりなくす事になります。

 

パイロットは何度もこの V1付近の速度でのエンジン故障時の対応を訓練されており、V1という速度の意味の重要性を充分に認識しています。

 

しかし、この機長はV1を超えた速度で離陸中止という、パイロットとしては絶対にやってはならない馬鹿げた操作を何故やってしまったのでしょうか?

(続く)

 1996年福岡空港ガルーダ航空DC10離陸事故(2)

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全世界のDC10型機の運航停止: アメリカン航空シカゴ事故(1)