自動車も今や至れり尽せりで、音や映像や空調など昔の車に較べれば夢のような移動空間となっている。
自動車も発明されたばかりの頃は、人や動物を動力としなくても良いうえに雨風さえもしのげる、画期的な乗り物としてもてはやされたのだろうが、私の記憶にある最も古いタイプのものではAMラジオくらいで、映像は車窓から覗く外の天然映像以外になく、空調的にも暖房はヒーターで冷房は窓から入る空気くらいだった。
気の効いた車は、効率的に外気を取り入れられるよう三角窓やダクトみたいなものを備えるものもあったが所詮外気で、外が寒い時や雨の日はガラスはくもるし、湿度が高くて暑い時は窓を開けてもやっぱり暑くて本当にどうしようもなかった。
そんな中、昭和40年代から50年代にかけて革命的に自動車に採用され始めたのがカークーラーで、家にもあまりクーラーが無かった時代だったが、カークーラーだけは確実に普及していったと思う。
特に普及率が高かったのが、客への配慮からかタクシーだった。
タクシーに乗ると助手席のダッシュボードの下に堂々と取り付けられたカークーラーを良く見たし、暑い時などタクシーの中は別世界のように涼しくて、ゴージャスなムードを感じる事が出来たものだが、当事今のようなビルドインタイプ?ではなくて外付けの堂々としたタイプである。
サーモと呼ばれるお利口さんな温度調整機能はなく、スイッチは弱・中・強と男らしい風量調整つまみと電源スイッチくらいしか無かった。
http://pds.exblog.jp/pds/1/201005/07/93/c0004193_1921231.jpg
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その後、クーラーは冷やすばかりでなく空気を自由に支配するエアコンと名前を変えて進化し、車内の音楽も8トラックという車独自のテープも開発されていつでもお気に入りの音楽を聞けるようになり、更に普通のカセットテープの聞けるカーステなんていうものも装備となった。
音や温度だけではなくメカニズム的にも、停まって動かそうとすれば信じられないくらい重たかったハンドルもパワステに移行して重たいハンドルを知らない人も今では多かろうし、くるくる回して開けるのが当たり前だった窓もパワーウインドとなり、マニュアルからオートマチックへ進化して車という空間は飛躍的に快適となった。
それ以外にも、バイアスと呼ばれた当時ごく普通のタイヤはラジアルタイヤとなり、鉄のホイールに樹脂や金属のホイルキャップから一体型のアルミホイールへの移行し、ライトも普通の電球だったものがハロゲンに変えて明るくなったと喜んでいたのさえも昔話となりHIDと呼ばれる真っ白で明るいライトが最近は主流のようだ。

どんどん進化を続ける自動車の最近のヒットと言えばカーナビで、ユーザーに画期的な快適さを与えたものの、私的には自動車にクーラーが付いたときの感動のほうが大きかったような気がする。
人は便利になると感動もするが、慣れると飽きて新たな欲求が生まれる。
欲求を贅沢と切り捨てるのは簡単だが、良い意味では人類進化の動力源といえるだろう。
とはいえ、東京や東北に昨日電力使用制限令が出され、暑い今年の7月以降の過ごし方には従来と違った工夫が必要なようである。
昨日も暑い和歌山地方の夜であったが、ほんの少しだけ今回の大災害を真剣に考えようとエアコンをいれずに過ごしてみたのだが、時折吹く風が少しだけの温度、少しだけの時間涼しさを感じさせてくれた。
・・・おの・・・
