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長男が生まれたときのことなので、もう15年ほど前の話である。
産気づいた女房を病院へ連れて行ったのが朝で、昼過ぎには無事長男が生まれた。
子供が生まれると当然産後1週間ほど入院生活が待っている。
女房の部屋は4人か6人部屋だったと思うが、そのなかにある女性がいた。

ある日、その女性は看護婦に呼び出されて部屋を出て行った。
しばらくすると、病室に子供の泣き声が聞こえたような気がした。
そのうち、その女性は帰ってきたけど涙目で暗い表情だった。

入院生活も数日経てば同部屋の人とある程度仲良くなり、女房もその女性と気軽に話をするようになっていた。
ある時その女性から、
「この病院へは出産に来たのではなく中絶するために来て、中絶手術は終わったけど、お腹から子供が引き出されたとき、暫くその子供は泣いていた。」
と聞かされた。

女房の退院の日が近づいたある日、その女性は
「退院のときに1度だけでいいから子供を抱かして欲しい。」
と言った。
事情を知っているだけに
「いいですよ」
と答えて退院を待ったが、長男に黄疸が出て退院が遅れてしまったために、その女性の方が先に退院してしまったので、とうとう抱かせてあげる事は出来なかった。

ほとんど女房から聞いた話だが、どういう事情があったにせよ、無念の中絶をして悲しそうな表情のまま退院していったその女性の事を時々思い出すことがある。
中絶手術とは言ってもある程度大きくなった胎児に対してなら、単なる出産と安楽死でしかない。

ちょっと重すぎる記事になってしまった。

 ・・・おの・・・