女性カメラマンのＮさんのアパートで２日目の朝を迎えた。
今週は中山の開催はなく、阪神と小倉で「被災地支援競馬」が３日間開催される。
僕は電話投票で３月中は馬券を購入できないので、インターネット会員のＮさんのアパートに金曜日の夜から３日間泊まり込みをすることになったのだ。
Ｎさんはアグネスタキオンの熱烈なファンで、土曜日は３歳馬が出走した８レースで応援した。馬券は２レースで的中したものの、ファルコンＳでアフリカンハンターが除外されたこともあり、残念ながら１勝もできなかった。
今日もタキオン産駒が出走する次の４レースで応援する予定だ。
◆3月20日（日）
・阪神１Ｒ 3歳未勝利 牝ダ1800ｍ：パイクスピーク
・阪神３Ｒ 3歳未勝利 芝1600ｍ：フルアクセル
・小倉３Ｒ 3歳未勝利 ダ1700ｍ：ウインテイクオフ、ゲンパチボロン
・小倉５Ｒ 3歳未勝利 芝1800ｍ：メイショウヤタロウ
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３歳戦では、皐月賞のトライアルレースとなる若葉Ｓ（芝２０００ｍ）が阪神で開催される。２着以内に入れば皐月賞の優先出走権を獲得できるため、こちらも熾烈な戦いになりそうだ。
昨日の夜にＮさんと検討し、以下のような予想になった。
◎ユニバーサルバンク
○サトノタイガー
▲ダノンミル
△カフナ
△リキサンマックス
△ヒラボクインパクト
最終的には直前のオッズを見て決めるが、僕はユニバーサルバンク、Ｎさんはダノンミルを軸にする予定だ。
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今日の最初は阪神１Ｒで、タキオン産駒のパイクスピークが出走する。
「報知の山本さんが推奨馬に指名していたわ」
とＮさん。報知ＰＯＧのブログで、昨日の新馬戦でもタキオン産駒のポレモスを指名し、３着と好走した。
「朝の段階ではシシリアンブリーズが２倍台の１番人気で、パイクスピークは５倍台で３番人気だね」
と僕が出馬表を見ながら言った。シシリアンブリーズはゼンノロブロイ産駒で、クロフネの半妹になる。
「ハブルバブルが勝った新馬戦で、パイクスピークは４着だったけど、シシリアンブリーズは２着だったからね」
とＮさん。レベルの高い新馬戦で、ハブルバブルは、一躍、オークスの秘密兵器と評判になった。
「１６頭中９頭が前走で掲示板に乗っているし、シシリアンブリーズは初ダートだから、波乱もあるよ」
と僕が続けた。２番人気はシンボリクリスエス産駒のブラックアテナ、４番人気はアッミラーレ産駒のヒダカアルテミスだが、ワイルドラッシュ産駒のロブストニケも成績や血統から無視できない。
Ｎさんはパイクスピークの単複と、シシリアンブリーズ、ブラックアテナ、ヒダカアルテミス、ロブストニケへの馬連とワイドだ。
僕はブラックアテナの単複と、シシリアンブリーズ、パイクスピーク、ヒダカアルテミス、ロブストニケへの馬連とワイドにした。
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阪神１Ｒは１番人気のシシリアンブリーズが勝ち、パイクスピークはゴール前で差されて５着だった。
「直線に向いた時は勝てるかと思ったのにね」
とＮさん。折り合いの難しいところがある馬で、最後はそれが響いたようだ。
「２着は初出走で、３着は５０倍台の人気薄だったね」
と僕が言った。２着以下はほとんど差がなく、馬券的には難しいレースだった。
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次は小倉３Ｒと阪神３Ｒだ。
「小倉はタキオン産駒が２頭出るけど、正直言って、あまり期待してないの」
とＮさん。
小倉３Ｒはウインテイクオフとゲンパチボロンの２頭で、ウインテイクオフは２２倍台、ゲンパチボロンは１００倍以上の人気薄だ。
「阪神１Ｒを見るといろいろ買いたくなっちゃうけど、小倉は２頭の複勝だけにするわ」
とＮさんが続けた。
阪神３Ｒは関東馬のフルアクセルが出走し、１５倍前後の７番人気だ。
「こちらも１６頭中１４頭が前走で掲示板に乗っているから、かなりの激戦だね」
と僕が出馬表を見ながら言った。
「でも、美浦のトラックマンがフルアクセルを今週の推奨馬に挙げていたから、チャンスは十分あるよ」
と僕が続けた。
「そうなの？ じゃあ、少し多めに買ってみようかな」
とＮさん。フルアクセルの単複と、１～６番人気のうち、３番人気のシゲルリジチョウを除いた５頭への馬連とワイドにした。
僕もフルアクセルの単複と、同じ相手への馬単とワイドにした。
混戦の時は、３番人気ははずしてよいというのが僕たちの作戦だ。
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小倉３Ｒは５番人気でゼンノロブロイ産駒のアントウェルペンが勝ち、ウインテイクオフは７着、ゲンパチボロンは１５着だった。
阪神３Ｒは７番人気でタキオン産駒のフルアクセルが勝ち、２着は８番人気のターフェル、３着は１番人気のペルレンケッテだった。
「フルアクセル、やったね！」
と僕が叫ぶと、Ｎさんは僕の首に抱きついてきた。ゴール前は大きなアクションと声でフルアクセルを応援していた。
「すごーい、すごーい！」
と言いながら、Ｎさんはやたらと僕の顔にキスしている。
馬券は２人ともフルアクセルの単勝（１,５２０円）と複勝（４６０円）、１・３着のワイド（１,３４０円）が的中した。
「もっと広く流しておいた方がよかったね」
と僕が言った。２着に入ったのも８番人気の関東馬で、馬連で１０,３６０円、馬単で２４,９３０円ついた。
「ぜいたく言わないの！ 的中して文句を言うのは仁義に外れるって、いつもヤスさんが言ってるじゃない」
とＮさん。確かにその通りだ。
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次は小倉５Ｒで、Ｎさんにとっては今日最後の勝負レースだ。
「タキオン産駒のメイショウヤタロウが１倍台の圧倒的な人気になっているね」
と僕がオッズ表を見ながら言った。
「２番人気になっているのがロックオブジブラルタル産駒のモエロックで、１番人気を争うと思っていたディープ産駒のロイヤルインパクトが離された３番人気だよ」
と僕が続けた。
モエロックの近三走は５・４・６着で、これだけの人気になっている理由がわからない。
「ウオッカの妹も出るのね」
とＮさん。ウオッカの全妹のセレブリティは２０倍前後の５番人気だ。
「ここは馬単しかないかもしれないね」
と僕がＮさんに言った。
「そうねえ。思い切って馬単の総流しにしてみるわ」
とＮさん。確かに相手を絞るのは難しいレースだ。
「僕は少し遊んでみようかな。初出走の馬が３頭いるので、メイショウヤタロウから３頭への馬単とワイドにしてみるよ」
と僕が続けた。
２人とも、阪神３Ｒが的中して、気分が楽になっている。
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小倉５Ｒは４番人気でカリズマティック産駒のカリスマミッキーが勝ち、メイショウヤタロウは頭差の２着に敗れた。
「あーあ、負けちゃった！」
とＮさん。ゴール前は大きな声を出して応援したが、わずかに届かなかった。
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今日は、４レース中、１レースしか的中しなかったが、タキオン産駒が１勝したこともあって、Ｎさんはサバサバとした顔をしている。
「仕方ないわ。それに、今日は小倉で中京記念があるから、そちらも応援するわ」
とＮさん。
ＧⅢ中京記念にはブロードストリートとチョウカイファイトの２頭が出走する。２頭の単複と、馬連とワイドを買って応援するようだ。
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今日は阪神１０Ｒに若葉Ｓがあるが、その時間に２人とも外出する予定なので、馬券だけ先に買っておくことにした。
昨日の夜の段階では以下のような予想だった。
◎ユニバーサルバンク
○サトノタイガー
▲ダノンミル
△カフナ
△リキサンマックス
△ヒラボクインパクト
僕はユニバーサルバンク、Ｎさんはダノンミルを軸にする予定だが、ユニバーサルバンクは３倍台の２番人気、ダノンミルは５０倍前後の人気薄だ。
「わたしは軸を変えないけど、ダノンミルの複勝と５頭へのワイドにするわ」
とＮさん。
「僕も軸を変えずに、ユニバーサルバンクから５頭への馬連と馬単にするよ」
と僕が続けた。
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「ねえ、ちょっっと。ダノンミルが勝ってるわよ！」
とＮさん。外出からアパートに戻り、パソコンでレース結果を見たＮさんが大きな声で叫んだ。
阪神１０Ｒの若葉Ｓは、１２番人気のダノンミルが勝ち、２着は５番人気のカフナ、３着は２番人気のダノンシャークだった。
Ｎさんはダノンミルを軸にしていて、複勝（１,０９０円）と１・２着のワイド（５,７１０円）が的中していた。
「驚いたね。完勝じゃない！」
ＪＲＡのサイトでレースビデオを見ながら僕が言った。
「単勝は５,１４０円、馬連は２２,２１０円ついてるよ」
と僕が続けた。
「だって、勝つと思ってなかったもん」
とＮさん。名前が気に入ってダノンミルを軸にしたらしい。
「僕が軸にしたユニバーサルバンクは１番人気だったけど、４着だったね」
と僕がレース結果を見ながら言った。
「あーあ、これでダノンミルに恩ができちゃったわ」
とＮさん。アグネスタキオンの熱烈なファンであるＮさんにとっては、皐月賞のことを考えると少し複雑な気持ちらしい。
「ダノンミルは１勝馬だったから、これで皐月賞の優先出走権だけでなく、ダービーの出走権も確実にしたのは大きいね」
と僕が続けた。
ダノンミルは父がジャングルポケットで母父がサンデーサイレンスだから、日本ではクラシック血統の本流だ。
「まあ、いいか。タキオン産駒のライバルを１頭減らしたと思えばいいのよね」
とＮさん。確かにそうで、３着のダノンシャークは皐月賞に出走できる可能性がなくなった。
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ＧⅢ中京記念は２番人気のナリタクリスタルが勝ち、ブロードストリートは８着、チョウカイファイトは６着だった。
「チョウカイファイトは頑張ったけど、勝ったらどうしようかと思っちゃった」
とＮさん。チョウカイファイトは複勝しか買っていなかったので、４コーナーで先頭に立った時は少し慌てたらしい。
「重賞は出るだけでもたいへんなんだから、どんな時も単勝を買わないといけないのね」
とＮさんがしみじみとした声で言った。
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今週はまだ「明日」があるのね、とＮさんが言った。
むかし、「明日という日は明るい日と書く」という歌があったが、その言葉を北の地の人に贈ろう。
（つづく）