新卒採用についての企業へのアンケートから(1)

 

 

採用基準は上がる!?

 

 

今年行われた新卒採用についてのアンケート結果では、採用基準については、8割の企業は現状どおりで、2割の企業は上げると言っています。この結果については、来年度も大きく変わることは無いと考えています。

 

ん、ん??  いったい、これはどういうことでしょう。

 

ちまたでは、学生有利で追い風が吹いていると言われていますが、売り手市場なのに採用基準が変わらないどころか、上げると言っている企業があるとは。

 

これは、いわゆる採用市場にマッチングの不一致が起きていることに起因しています。

 

学生に人気のある企業には多数の応募者が集まるという、一部企業への集中現象が見られます。しかし、このような企業では買い手市場なのかといえばそうではなく、自社の経営戦略に合致する人材に出会える確率はそう高くはありません。また、内定を出したとしても辞退されないようにしなければなりません。自社が良いと考える人材は、かなり高い確率で他社でも高評価されますので、囲い込みに必死です。

 

とはいえ、大幅に求人人数を増やしているわけではありませんから、人気企業では母集団形成に困ることはありません。従って採用基準を下げる必要もなく、中には上げるところも出てくるわけです。

 

では、一般的な企業ではどうでしょうか。

 

特別な人気企業でない限り、どの企業もそれなりに母集団形成には苦労しています。

採用活動にとって、母集団は非常に重要な要素です。それは、母集団の大きさと最終選考に残る人数とは、ある程度比例するからです。

母集団形成に成功すれば、採用基準は変えなくても問題ありませんが、十分な母集団が確保できない場合、多少の調整は必要となります。母集団形成が十分でなく、かつ、人数の確保が必要な場合は、基準を下げますが、数合わせが不要であれば、下げる必要はありません。ここは各企業の状況によります。

 

やはり、就活生に人気のない業種、あるいは、大量採用が必要な企業は、基準を下げざるを得ないでしょう。例えば、外食産業とか教育支援、福祉関連。就業時間がシフトしたり土日が休みでなかったりするところが不人気である原因のようです。このような産業のすべての企業が長時間労働を前提にしている企業ばかりというわけではなく、しっかりとした労働時間管理を行っている企業もあるのですが、悪いイメージもなかなか払拭出来ていません。

そのため、どうしても採用基準を下げざるを得ない企業も出ているようです。その結果、自社の働き方に合わず早期退職に至り、結果、翌年の求人数が増えるという、悪循環を繰り返します。

 

企業にはそれが分かっているので、闇雲に採用基準を下げることはしないと思います。ただ、採用プロセスの過程において、状況を見ながら調整していくことはあります。基準ありきでの選考はありません。したがって、基準を上げるのか下げるのかと言われれば、現状どおりということになります。

 

必要人員の確保が難しい企業では、むしろ、新卒採用から第二新卒や中途採用に目を向けているようです。最近では、派遣社員の人数が全国的に減少しており、正社員化の動きが進んでいます。

 

中途採用や転職については別の機会にお話しするとして、新卒の採用基準の状況からは、新卒での就活がプラチナチケットで楽勝!というわけには行かないようです。