ひと雨来てくれたお陰で、地表を覆っていた熱と湿気を存分に孕んだ空気の分厚い層が洗い流されたようで、今日は風が清々しい。それでも通りを歩いていると頑固汚れのような熱気の残滓を顔と鼻腔とで感じる瞬間があり、その時は何故だかちょっと可笑しくなる。頭上では雨雲の名残のような雲のヴェールが夕陽に照らされ、空は淡い黄金色と水色に彩られている。東の空では途方も無く大きな入道雲が全身を膨らませ、随分と誇らしげだ。


自分は暑い夏が好きなのだが、平日は毎日通院して午後から出勤というイレギュラーな生活サイクルのためか、今年は少し暑さが身体に堪える。放射線の影響か、胸の辺りがひりつくようになってきているのも気がかりだ。


それでも夏のこの時間、つまり、昼と夜の中間の、空はまだ十分明るいのに街灯やヘッドライトが灯り始め、熱気と冷気とがコーヒーフレッシュを流し入れた直後のコーヒーカップの中のような混ざり方をしている、この複雑な時間が自分にはとても豊かに感じられ、愛おしく感じられるのだ。家に着く頃には、もう夜の帳が下りているのだろう。この束の間の時間を、自分は通勤バスの窓を通して堪能している。


変わり映えのない毎日というのは、幸いなことに、この田舎暮らしにはない。晴れれば晴れたなり、降ったら降ったなりの豊かな表情を見せ、田畑は植えれば若草、茂れば青々と、実れば黄金色、そして収穫が終われば土色になるのを日々見るので、通勤時にぼんやり見るだけでも季節ごとの風情の変化が面白い。


できればせめてテクテクと歩き回って、この景色を楽しみたいものだ。


今日でまだ、放射線治療が12/27日。