線分図を使わない倍数算 | 受験算数はきょうもおもしろい

以前の記事に関連する話です。

 

相当算と同じように、倍数算も数式だけで(比例式を使って)解くようにすると、ほとんどの問題で同じ対応ができるのでオススメです。

たとえば次のような感じになります。

 

  差が一定の倍数算①(恵泉2022)

 

買い物前の姉と妹の所持金の比は、9:7でした。2人がそれぞれ150円ずつ出し合って300円のおかしを買ったところ、姉と妹の残りの所持金の比が3:2になりました。買い物前の姉の所持金を求めなさい。

 

右差し 倍数算の解き方としては
 ❶差が一定か、和が一定か(和も差も一定でないか)をまず考えて線分図を使って解こう

 ❷2つの比(⑨:⑦と3⃣:2⃣)でそのまま式を立てて消去算で解こう

のどちらかで習うはずですが、❶だと2つ以上の解法を問題に応じて使い分ける必要があるため、また❷だと変数が2つになってしまうため、どうしても混乱する小学生が出てきてしまいます(そのときは理解できてもそのあといろいろな特殊算の解法をインプットしていくうちにグチャグチャになってしまう。倍数算が苦手な小学生が多いのもこのあたりに原因がありそうです)。

 

解法はシンプルに1つですべての問題に対応できるのがベストです。

そこで倍数算のオススメは、2つ出てくる比のうち1つだけを最初に使う(残り1つの比は最後に比例式のなかで使う)というものです。

 

右矢印 「買い物前の姉と妹の所持金の比は、9:7」より、最初の姉の所持金を⑨円、妹の所持金を⑦円とする。

  1. 2人がそれぞれ150円ずつ」出した→残りの所持金は姉が⑨-150、妹が⑦-150
  2. 姉と妹の残りの所持金の比が3:2に」なった→比例式にすると (⑨-150):(⑦-150)=3:2。ここで内項の積=外項の積より (⑦-150)×3=(⑨-150)×2。㉑-450=⑱-300 ③=150 より ①=50円
よって「買い物前の姉の所持金」⑨は450円

 

 

  和が一定の倍数算①(東京純心女子2022)

 

兄と妹の所持金の比は3 :1でしたが、兄が妹に600円あげたので、2人の所持金の比は5 : 3になりました。はじめの兄の所持金は何円でしたか。

 

右矢印 はじめの「兄と妹の所持金の比は3 :1」より、最初の兄の所持金を③円、妹の所持金を①円とする。

  1. 兄が妹に600円あげた」→残りの所持金は兄が③-600、妹が①+600
  2. 2人の所持金の比は5 : 3に」なった→比例式にすると (③-600):(①+600)=5:3。内項の積=外項の積より (①+600)×5=(③-600)×3。⑤+3000=⑨-1800 ④=4800 より ①=1200円
よって「はじめの兄の所持金」③は3600円
 
 

  差が一定の倍数算②(関西大倉2022)

 

兄と妹がともに毎日1ページずつ日記を書いています。ある日の兄と妹がこれまでに書いた日記のページ数の比は8:5でしたが、30日後は3:2になりました。30日後までの兄の書いた日記の総ページ数は□ページです。

 

右矢印 「ある日の兄と妹がこれまでに書いた日記のページ数の比は8:5」だったので、その日までに兄が書いたのが⑧ページ、妹が書いたのが⑤ページとする。

  1. ともに毎日1ページずつ日記を書いて」いる→30日後の日記のページ数は兄が⑧+30、妹が⑤+30
  2. 30日後は3:2に」なった→比例式にすると (⑧+30):(⑤+30)=3:2。内項の積=外項の積より (⑤+30)×3=(⑧+30)×2。⑮+90=⑯+60 より ①=30ページ
よって「30日後までの兄の書いた日記の総ページ数」⑧+30は270ページ
 
 

  和が一定の倍数算②(和洋国府台2022)

 

姉と妹の所持金の比は7:4でしたが、姉が妹に300円渡したので、姉と妹の所持金の比は4:3になりました。姉のはじめの所持金は□円です。

 

右矢印 「姉と妹の所持金の比は7:4」より、はじめの姉の所持金を⑦円、妹の所持金を④円とする。

  1. 姉が妹に300円渡した」→残りの所持金は姉が⑦-300、妹が④+300
  2. 姉と妹の所持金の比は4:3に」なった→比例式にすると (⑦-300):(④+300)=4:3。ここで内項の積=外項の積より (④+300)×4=(⑦-300)×3。⑯+1200=㉑-900 ⑤=2100 より ①=420円
よって「姉のはじめの所持金」⑦は2940円

 

 

  和も差も一定でない倍数算(海城2022第2回)

 

兄と弟の持っている金額の比は7 : 3でしたが、兄は670円、弟は330円使ったところ、残金の比は3:1になりました。はじめに兄が持っていた金額を求めなさい。

 

右矢印 はじめに「兄と弟の持っている金額の比は7 : 3」だったので、最初の兄の所持金を⑦円、弟の所持金を③円とする。

  1. 兄は670円、弟は330円使った」→残りの所持金は兄が⑦-670、弟が③-330
  2. 残金の比は3:1に」なった→比例式にすると (⑦-670):(③-330)=3:1。内項の積=外項の積より (③-330)×3=(⑦-670)×1。⑨-990=⑦-670 ②=320 より ①=160円
よって「はじめに兄が持っていた金額」⑦は1120円

 

 

  百分率で表された倍数算(精道三川台中2021第2回)

 

ある建物の中に100人の人がいる。このうち、99%が男性である。このうちの何人かの男性が建物の外に出ていってしまったため、建物の中の男性の割合は98%となりました。さて、建物の中に何人の男性が残っていますか。 

 

右矢印 最初に「99%が男性」だった=男女比99:1だったのが、その後「男性の割合は98%」になった=男女比98:2になったとひとまず比におきかえる。

 

あとは同じで「建物の外に出ていってしまった」男性を〇人とすると、

 99-〇:1=98:2 より 1×98=(99-〇)×2

 198-②=98 より ①=50人

よって、50人の男性が出ていったから、建物の中に残っている男性は 99-50=49人

 

 

  特殊な倍数算(田園調布2022第3回)

 

A、B、Cの3人が持っているおはじきの合計は126個です。Bが持っているおはじきの1割をCにわたしたところ、3人の持っているおはじきの比は2:4:1になりました。はじめにBが持っていたおはじきは何個ですか。

 

右差し ここまではすべて同じ1つの解き方で行けましたが、これだけは違う対応が必要になります。結果から時間を戻して考えます。

 

右矢印 まず「Bが持っているおはじきの1割をCにわたした」だけなので、Aの持っているおはじきの数は変わっていない。そこでAのおはじきの個数がまず決まる。最後に「3人の持っているおはじきの比は2:4:1」だったから、Aは全体の²⁄₇を持っているので、126ײ⁄₇=36コ。

BはAの倍の72コ、CはAの半分の18コ。

 

よって、最後にBが72コ、Cが18コになったところに注目すると、これは「Bが持っているおはじきの1割をCにわたした」結果なので「はじめにBが持っていたおはじき」は72÷(1-0.1)=80コ 完了