素数をきわめる④ | 受験算数はきょうもおもしろい

以前の記事の続きです。

 

初の試みですが、素数に関する良問として今回は大学入試問題を取り上げます。素数や倍数についてきちんと勉強してきた中受生なら解けるはずで、同じ切り口でいつ中学入試で取り上げられてもおかしくないというのが背景です。

 

1000以下の素数は250個以下であることを示せ。(一橋大学2021年前期)

 

100以下ならともかく、1000以下の素数を試験時間内に数え上げるのはまず不可能。となると素数でないものを取りのぞいていくしかない。すぐにわかるのは偶数は素数でないこと(2をのぞく)。3の倍数や5の倍数も素数ではない(3と5をのぞく)。となると本問は、だれでも一度は解いたことのあるはずの「2でも3でも5でも割り切れない数」の個数を探すときと同じアプローチからはじめればよいことがわかります。

 

 「2でも3でも5でも割り切れない数」の個数

 

1から1000までの整数のなかで

❶ 2、3、5で割り切れる整数がのべ(重なりを気にしない単純合計で)1033コある。

 2で割り切れる…1000÷2で500コ

 3で割り切れる…1000÷3で333コ(あまりは無関係なので考えない。以下も同じ)

 5で割り切れる…1000÷5で200コ

 

❷ 6(2と3の最小公倍数)、10(2と5の最小公倍数)、15(3と5の最小公倍数)で割り切れる整数がのべ332コある。

 6で割り切れる…1000÷6で166コ

 10で割り切れる…1000÷10で100コ

 15で割り切れる…1000÷15で66コ

 

❸ 30(2と3と5の最小公倍数)で割り切れる整数は1000÷30で33コ

 

「2、3、5のどれかで割り切れる数」の個数は❶-❷+❸で求められるから(過去記事「3つの集合算」参照)これを計算すると

 1033-332+33=734個

あり、ここで残った266個が「2でも3でも5でも割り切れない数」の個数となる。

 

 1000以下の素数の個数

 

ここから素数でない1の1コを引き、素数である2、3、5の3コを足すと1000以下の素数は268個以下というところまでまずしぼれた。

 

そしてこの268コのなかには素数でない数として少なくとも次の21コ(素数どうしの積)が含まれており、これをのぞくと247コとなる。

 7×7、7×11、7×13、7×17、7×19、7×23

 11×11、11×13、11×17、11×19、11×23

 13×13、13×17、13×19、13×23

 17×17、17×19、17×23

 19×19、19×23

 23×23

よって1000以下の素数は250個以下 完了

 

 

別解

4つの集合算について知っているともう少し美しく解けます。3つの集合算のつづきで簡単におぼえられるし、これを知っているとラクに解けるという問題がほかでも出される可能性があるので、使う使わないはともかく、この機会におさえておくことをオススメします。

 

 4つの集合算

 

3つの集合があるとき

 ❶…それぞれの集合の単純合計

 ❷…2つの集合の重なりの合計

 ❸…3つの集合の重なりの合計

とすると、

 3つの集合のどれかにあてはまる個数は ❶-❷+❸ 

で求められる。

 

同じように、4つの集合があるとき

 ❶…それぞれの集合の単純合計

 ❷…2つの集合の重なりの合計

 ❸…3つの集合の重なりの合計

 ❹…4つの集合の重なりの合計

とすると(ベン図では書けないが)

 4つの集合のどれかにあてはまる個数は ❶-❷+❸-❹ 

で求められる。

 

これを使うと、1から1000までの整数のなかで

❶ 2、3、5、7で割り切れる整数がのべ1175コある。

 2、3、5で割り切れる…上で求めた計1033コ

 7で割り切れる…1000÷7で142コ

 

❷ 6(2と3の最小公倍数)、10(2と5の最小公倍数)、15(3と5の最小公倍数)、14(2と7の最小公倍数)、21(3と7の最小公倍数)、35(5と7の最小公倍数)で割り切れる整数はのべ478コある。

 6、10、15で割り切れる…上で求めた計332コ

 14で割り切れる…71コ

 21で割り切れる…47コ

 35で割り切れる…28コ

 

❸ 30(2と3と5の最小公倍数)、42(2と3と7の最小公倍数)、70(2と5と7の最小公倍数)、105(3と5と7の最小公倍数)で割り切れる整数はのべ79コある。

 30で割り切れる…33コ

 42で割り切れる…23コ

 70で割り切れる…14コ

 105で割り切れる…9コ

 

❹ 210(2、3、5、7の最小公倍数)で割り切れる整数は4コ

 

よって1000までに「2、3、5、7のどれかで割り切れる整数」は❶-❷+❸-❹より

 1175-478+79-4=772コ

あり、残った228コが「2でも3でも5でも7でも割り切れない数」の個数となる。

 

ここから素数でない1の1コを引き、素数の2、3、5、7を加えると231コとなるから、1000以下の素数は250個以下 完了