以前の記事の続きです。
最小公倍数を求める問題で、すだれ算を使うのがむずかしいことがあります。10コとかの最小公倍数を求めるようなケースです。
たとえば次の問題。
すべてで割り切れる最小の整数①(穎明館2022)
1、2、3、4、5のすべての数で割りきれる最も小さい整数は60です。1、2、3、4、5、6、7、8、9、10のすべての数で割りきれる最も小さい整数は▢です。
「1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の最小公倍数を求めなさい」という問題に読み替えることができますが、10個のすだれ算をするというのは大変なので、論理で詰めて行くことになります。
この「最も小さい整数」がもつ因数として何がないといけないか、1から10までの数字を大きい方から順に素因数分解して考えていくと
10=2×5 → 「最も小さい整数」の因数として「×2」「×5」が必要
9=3×3 →「×3」「×3」が必要
8=2×2×2 →「×2」「×2」が追加で必要(「×2」1コは10に含まれている)
7 →「×7」が必要
6以下の数がもつ因数はすべてここまでに含まれている。
以上より、1から10までの「すべての数で割りきれる最も小さい整数」は
2×2×2×3×3×5×7=2520
なお、すだれ算もやってできないことはないので、検算に使うのはいいかもしれません。
すべてで割り切れる最小の整数②(名古屋経済大学市邨中2021)
1から15までのすべての整数で割ることができる数のうち、最小の数はいくつですか。
この「最小の数」がもつ因数として何がないといけないか、「1から15まで」を大きい方から順に素因数分解して考えていくと
15=3×5 → 「最小の数」の因数として「×3」「×5」が必要
14=2×7 →「×2」「×7」が必要
13 →「×13」が必要
12=2×2×3 →「×2」がもう1コ必要(「×2」1コは14に、「×3」1コは15に含まれている)
11 →「×11」が必要
10=2×5 (「×2」も「×5」もすでにある)
9=3×3 →「×3」がもう1コ必要
8=2×2×2 →「×2」がもう1コ必要
7以下の数がもつ因数はすべてここまでに含まれている。
以上より、「最小の数」は2×2×2×3×3×5×7×11×13=360360
一部で割り切れる最小の整数(甲陽学院中2017)
0を除く整数について、次の問いに答えなさい。
⑴ 2から10までの9個の整数すべてで割り切れる整数のなかで最小のものは何ですか。
既出のとおり「最小のもの」は2×2×2×3×3×5×7=2520
⑵ 2から10までの9個の整数のうちの8個で割り切れる整数を小さい方から3個求めなさい。
割り切れない1個はどの数字かという切り口で考えてみる。「2から10までの9個の整数」で割り切れる数 2520=2×2×2×3×3×5×7 を
- 10で割り切れないようにするにはここから「2×2×2」か「×5」をなくす必要あるが、そうなると8や5でも割り切れなくなり「8個で割り切れる」条件をみたさない。
- 9で割り切れないようにするには「×3」を1コなくす必要(2コなくすと3でも割り切れなくなる)→このとき2520÷3=840
- 8で割り切れないようにするには「×2」を1コなくす必要(2コ以上なくすと4でも割り切れなくなる)→このとき2520÷2=1260
- 7で割り切れないようにするには「×7」をなくす必要→このとき2520÷7=360
- 6で割り切れないようにするには「2×2×2」か「×3×3」をなくす必要あるが、そうなると8や9でも割り切れなくなってしまう。
- 5以下の数字が「割り切れない1個」になることはない。
以上のように「割り切れない1個」の候補は9か8か7。つまり360や840や1260が「8個で割り切れる整数」となるが、これらの倍数もまた「8個で割り切れる整数」となる。
よって、小さい順にならべていくと360、720、840、1080,1260、1440…となり、「小さい方から3個」は360、720、840