もしもの世界 | 受験算数はきょうもおもしろい

小学生に算数を教えていると「この道の工事なんかしてなかったら道順は簡単に出せるのになんで工事するかなあ…」などとぶつぶつ言いながら問題に取り組んでいることがあります。

そういう「もしも●●だったら」の思いつきには論外なものもありますが、なかには解法につながる重要なヒントを含んでいるものもあります。

 

この例だと「工事中の道がなかったとしたらぜんぶで35通り。工事中の道を通る道順は9通り。だから35-9=26通り」という余事象の発想が出てきます。

こんな素朴な「もしも」の発想が生かせる問題としてたとえば次のようなものがあります。

 

 

  過不足算(明治学院中2019第2回)

 

長椅子が並んでいるチャペルに、ある学校の中学1年生全員を座らせようと思います。1つの長椅子に3人ずつ座らせると22人が座れなくなり、5人ずつ座らせると長椅子がちょうど12脚余ります。この学年の人数を求めなさい。

 

この問題の受験生正答率は24.8%であったと公表されています。

右矢印 まず「5人ずつ座らせると長椅子が12脚余る」という問題文の情報を「5人ずつ座らせるには生徒60人が足りない」と読み替える。そこで長椅子の数はそのままで「もしも生徒があと60人いたら…」と考えてみる。

すると「3人ずつ座らせると22人が座れない。5人ずつ座らせるには60人足りない」といういまの状況は、「3人ずつ座らせると82人が座れない。5人ずつ座らせるとちょうど座れる」という状況に変わる。これなら簡単で、長椅子の数は 82÷(5-3)=41脚 とすぐにわかる。
このとき学年の人数は  5人×(41脚-12脚)=145人

 

 

  数の性質(清泉女学院2021・3期)

 

6、9、15、21、24、30、33の7個の整数があります。7個の整数のうち、6個の整数の和から残りの1個の整数を引くと90になりました。引いた整数を答えなさい。

 

右矢印 いまは「7個の整数のうち6個を足して残りの1個を引いた」という問題。これを「もしも7個ぜんぶを足していたら…」と考えてみる。

 

するとその合計は138(=6+9+15+21+24+30+33)となっていた。実際は90だったのでその差は48。これは6個の和に「残りの1個」を足すのではなく引いたため。つまり48というのは「引いた整数」の2コ分だからその整数は 24

 

 

  弁償算(品川女子学院2022算数)

 

AさんとBさんがゲームをします。最初の持ち点を50点として、1回勝てば3点もらえ、負ければ2点引かれます。このゲームを15回行った結果Aさんは75点で、Bさんは▢点になりました。ただし、1回のゲームで引き分けはないものとします。


右矢印 いまは「勝てば3点もらえ負ければ2点引かれる」ゲーム。これを毎回2点ずつ増やして「もしも勝てば5点もらえ負ければ点がもらえないゲームだったら…」と考えてみる。

 

すると「15回行った結果Aさんは75点」→「15回行った結果Aさんは105点」となっていた。

つまり(最初の持ち点50点を引くと)Aは 55点÷5点=11回勝ったとわかる。

逆にBは11回負けた(が4回勝った)ということなので、Bの点数は

  50点+3点×4-2点×11= 40点

 

ちなみに弁償算の教科書的な解き方は次のようなもの。ここでもやはり「もしも」の発想が使われています。どうせ「もしも」を考えるのなら、上の「もしも」の方が簡単なような気がします。
「もしもAさんが15回ぜんぶ勝っていたとしたら 3点×15回+50点=95点となっていた。実際は75点だったのでその差は20点。1回の勝ちが1回の負けに変わるごとに5点ずつ減る(3点もらえないうえに2点引かれる)からAが負けたのは4回。逆にBは4回勝って11回負けたのでBの点数は40点」