続 酒のはなし | 得意楽器はボキャブラリー

続 酒のはなし

以前に何話まで書いたか忘れてしまったので
改めて酒のはなしをしたいと思います。

僕が新しい店で何をやりたいのか感じていただければ幸いです。


昨夜某居酒屋で飲んでいたときのこと。

生ビールも飽きたし何を飲もうかと
壁の張り紙を見渡した。

魔王や村尾など名高い焼酎と
それなりに「酒通」を満足させそうな
日本酒の銘柄が並んでいる。

気まぐれで
久しぶりに「黒○純米吟醸」など頼んでみた。

しかしやはり想像以上に受け付けなかった。

ウマいとかマズいという問題ではなくて
香水のような作為的な香りがダメなのだ。

なぜ日本酒はこういう方向へ行ってしまったんだろう。

そういう僕も遠い昔
こういうのが日本酒だと思って飲んでいた。

端麗辛口、そして吟醸香
それこそが日本酒という風潮がまかり通っている。

例えて言うなら
野暮ったい田舎娘に
ダイエットをさせて厚化粧を施した
のが
今世の中に出回っている日本酒である。

だからいいんじゃないか
という人もいるだろうが
それは田舎娘の野暮ったさを隠すがために
そこに含まれる個性や魅力も全部消してしまうことである。

瞬間的には厚化粧のキャバクラ娘もいいかもしれないが
ずっと付き合っていくには
素顔を見ないわけにはいかないのだ。

そういう日本酒は飽きが来る。
ずっと飲み続けることができない。
協調性がない。料理にも合わない。

おまけに喋ると方言が出るので黙っている。


キャバクラ通いのオヤジは
「いやあ、吟醸はうまいねえ」とのたまう。

「なんで吟醸はうまいんですか?」
と聞く部下。

「そりゃおまえ、吟醸は米をいっぱい磨くんだ。
糠を削るんだから雑味がなくなるんだ。
だからウマくて当たり前だろう」

とオヤジは言うだろう。

ちょっともっともらしい。
間違っているとも言えない。

しかし、削られるのは雑味だけではない。
旨味やその他様々な個性も一緒に削られることに
オヤジは気づいていない。

さらに雑味を減らすために炭素濾過をかけてある。
これには美白作用もある。

自慢は科学の力を結集した新型酵母による香りの厚化粧。

こうして何の個性も旨味もない薄っぺらなキャバ嬢、、、
いや、酒は出来上がっているのである。


実際にほとんど磨いていない米で造られた
びっくりするぐらいウマい酒もある。

そんな素顔の酒について
次回は書いてみたいと思う。