新たな一歩

やっと進めそう

今度は大丈夫かな??

不安もあるけど、進むしかない!
初めてのデートは箱根だった。

夜行バスで静岡の研修に向かい、その帰りに会うことになっていた。
小田原まで車で迎えに来てくれた。

ドライブの道すがら、急に彼が言った。

「俺の前であくびしないでくれる?俺といてもつまらないと思っちゃうから。」

「ごめん、昨日バスで来たからあまり眠れてなくて、つい…」

「仕事で疲れてるのは俺も同じだし。あと、助手席で寝るなんてこと、絶対にしないでね。」

違和感と言えば最初の違和感はこれだった。
最初のデートで最初の違和感、ここで冷静に立ち止まっていたなら、私の傷は浅くてすんだのかもしれない。私がばかだった。

でも、好きだった。
もしかすると好きだと思い込もうとしていたのだろうか。

周りの友達はほぼみんな結婚をし、母親になっていた。

母や親戚からのプレッシャーもあった。
田舎ならではの近所の目も。

これを逃したらこの先はないかもしれない…そんな焦りも、私の冷静さを奪っていた。

お付き合いをするようになり、間もなく結婚の話になった。トントン拍子で話は進み、その年の秋には入籍することに決まった。

違和感は増えたけど、こんな私でも結婚できるという嬉しさで感覚が麻痺していた。

きっと、そうだった。


お付き合いをするようになり、束縛やルールが無数に増えていった。

親友に相談すると「akiちゃん、愛されてるね。」そう言われた。

大丈夫、きっと結婚したら彼も安心するはず。束縛もなくなるはず。仲良くやっていけるはず。

そんな訳あるはずない。
それは、全てを失い、心にも体にも傷を負った今だから言えることかもしれないけれど。

立ち止まるチャンスは無数にあった。
それを生かせなかったのは紛れもない私自身のせい。
そもそも私達は共通の友達の結婚式で知り合った。

私も一人向こうも一人で結婚式に来ていた。

同じ大学だということが分かり、帰り道一緒に話ながら帰った。
それからは二回ほどその共通の友達の家でみんなでご飯を食べたくらい。
あとは7-8年ほど会ってなかった。唯一繋がっていたのは年賀状のやり取り。それも数年前に向こうの住所が変わり、出した年賀状が戻ってきてしまった。

ここまでの関係だったんだな

そう思った。

全く気にならない存在だったと言えば嘘になるかもしれない。でも、年も離れていてきっと結婚してるんだろうな。そんな風に思っていた。

私は東京での生活を終え、転職して実家の関西に戻っていた。仕事の研修を見つけては積極的に参加していた。とにかく経験を積み、早く一人前になりたくて。

2013年秋、仕事関係の映画が東京の小さな映画館でのみ上映されることを知り、夜行バスを取った。
映画が終わったのは朝10時頃。

時間もできたので少し前に亡くなった子のお墓参りに行くことにした。当時一緒にボランティア活動をしていた先輩も誘って。先輩は急なお誘いだったのに時間を作ってきてくれた。お墓参りを終えて少し遅いランチをしていたとき、彼からメールがあった。連絡を直接取り合うのは初めてかもしれない。

「私、関西に住んでるんですけど、今東京にいます」

先輩には悪かったけどランチをして早々に別れ、横浜へ向かった。一緒に食事をということになっていた。

忘れもしない横浜のレストラン。
何年ぶりだろう。
こんな顔だったっけ?
こんな体型だっけ?
髪には白いものが混じっていた。

実は離婚を2回してる。
子どもが一人いる。
親権はない。
養育費は払っていない。

彼の話を聞いて涙が出そうになっていた。
なんて運の悪い人なんだろう。
酷い奥さんに2度も当たるなんて。

これが私のこの時の正直な気持ちだった。

「こんな僕で良ければまた会ってくれないかな」

「喜んで」

こうして奴はきっと私に照準を合わせたのだろう。