書く前に読もう超明解文学史 | 朝の書評

書く前に読もう超明解文学史

三田 誠広
書く前に読もう超明解文学史―ワセダ大学小説教室 (集英社文庫
  好き勝手に本を読んできましたので、ぜんたい、文学史的にはまとめてどう捕らえ、押さえておけばいいのかというような不安がよぎることがあります。手短に知識を得たい、そういう人向けへの商売であることを隠さずに、正面から文学史のキモをまとめました、というこの作者の姿勢には、むしろ好感を持ちました。
 考えてみれば、教科書や参考書のたぐいはすべてそれまでの蓄積を要領よくまとめたものですし、一定の需要のあるものです。流行りの理論を上っ面だけなぞったものや、読者の気を惹こうとするだけの薄っぺらな内容のものは論外ですが、この本は、真面目に書かれていて、よいと思います。
 この本の中の、人間のキャラクターをしっかり描く自然主義文学が、日本に入ってきて少々曲がって理解されて、日本的私小説になった、というくだりは、最近どっかで耳にしたような気がします。実は売れっ子ライターのあの人とかも、この本を密かにネタ本にしてるんじゃないかなあ。いや、知らないけどね。ただの妄想なんで間違ってたらご容赦ください。