知られざる傑作
- バルザック, 水野 亮
- 知られざる傑作―他五篇
「砂漠の情熱」は、描写の力によって、美しい豹と女性の愛人のイメージが一体化しています。「ことづけ」は、若者とお金持ちの伯爵夫人との不倫を描いています。当時のフランスの時代背景はよく知りませんけれども、伯爵が、非常に若い女性を妻に迎えて、そしてその妻が、若い愛人を作って、伯爵のほうもそのことを薄々知っていて黙認しているかのように描かれています。後半、伯爵が貪欲に暴食する描写があって、特にプロットに絡まないのに妙に印象深いシーンです。「恐怖時代の一挿話」はフランス革命直後のお話で、当時は実際のところは恐怖時代だったんですね。「ざくろ屋敷」は、ストーリーは単純ですが、湖畔のそばの葡萄園の美しい景色の描写に圧倒されます。「エル・ヴェルデゥゴ」は、冒頭で前時代的と思ってそのまま感情移入できずに読み終わりました。巻末の解説によると、由緒ある爵位を子孫に伝えねばならないという観念が引き起こした残虐非道な行為が描かれているそうです。「知られざる傑作」も、当時の女性の貞操観念に芸術論を混ぜ込んで書かれてあるようでしたが、今ひとつ自分とピントが合いませんでした。
いずれにせよ、バルザックの描写力の圧力というか腕力というか、そういったものの片鱗に触れることができてよかったと思います。いずれバルザックの長編にも挑戦してみたいと思います。
288.天地無用・其の四
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00288.htm
305.ざくろ屋敷再び・其の一
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00305.htm
文学は社会と関係がない
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