その街の今は 柴崎友香(新潮2006/07) | 朝の書評

その街の今は 柴崎友香(新潮2006/07)

 
新潮 2006年 07月号 [雑誌]
【完全ネタバレ全あらすじ】
 大阪生まれ大阪育ちの「わたし」は28歳、会社が倒産して今は喫茶店でウエイトレスのバイトをやっている。大阪の古い写真を集めるのが趣味。冴えない合コンの帰り、良太郎と知り合う。酔っ払って盛り上がり、付き合おうと言い合いメールを交換したらしいが、翌日になると思い出せない。そのまま友人の女性を交えて三人で昼飯を一緒に食う仲になる。その後、以前に付き合っていた鷲沼さんと再会する。彼はすでに別の女性と結婚しているのに、飯でも食おうと「わたし」を誘う。見透かされていると思いつつ、やっぱりとても好みのタイプなので「わたし」は内心迷うが、結局返事のメールは出さない。良太郎に電話しようかと一瞬思うがそれもしない。

【感想】
 まずは、良太郎の動きが鈍いのが引っかかります。酔っ払ってはっきり覚えてなくても、自分のタイプかどうかは次に会えばわかるわけです。そしてメールの記録もあるわけです。好きなら当然すぐに次の行動に移るでしょう。男の子なんだし。つまりは、さほど「わたし」を好きではないのだと思います。もっとはっきり言うと、すべて「わたし」の妄想だと仮定してもそれなりに成立する話なんですね。頭の中であれこれ思うだけで、結局何もしない小説なんです。そして、「わたし」が言ってることは、最初から最後まで同じなわけです。いくらいいこと言ってても、ひとつのイメージを切り取るだけならこの五分の一の長さにまとめてほしい、それで十分だと思う。それをここまで長くそれなりに小説っぽく書けるのがすごいということなのかもしれませんが……。
 小説というものは、ストーリーがなくても、読者の感情を突き動かし変化させる立体性を持つことができるし、そうであってほしい、と思うのは私の偏狭な思い込みなのでしょうか。

柴崎 友香
その街の今は

291.描写を発見する・其の一
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00291.htm