文明崩壊 | 朝の書評

文明崩壊

ジャレド・ダイアモンド, 楡井 浩一
文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)
 
ジャレド・ダイアモンド, 楡井 浩一
文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)

東京のヒートアイランド化は明らかで、最近では、毎年のように、五月初めに気温が30度を超えて、冷房なしでは過ごせません。このようなことは、二十年前は、確かになかったのです。いくら夏が暑くても、一夏冷房なしで過ごすことも可能でした。大阪や京都に比べれば、東京のほうが涼しかったのです。ところが、ここ十年くらいの東京の夏の暑さは殺人的であって、エアコンがなければ死の危険すら感じるほどです。実際、東京で夏に熱中症に掛かり病院に運ばれるお年寄りのニュースを耳にします。
温暖化なのか都市化なのか両方なのか。原因は知りませんが、現に十年前、二十年前とまったく環境が変わってしまったのに、歴史的文化的伝統から、東京に一極集中し続け、高層ビルの建築ラッシュが続いています。私は、そろそろ東京が、マヤの古代都市のような状況になってきたのではないかと思います。クールビズなんて言ってますけれども、首都として機能するにはすでに暑すぎるのです。技術的な問題ではなくて、江戸や東京の今までの伝統文化は、このような暑さに対応できないのです。
そうすると、本書の、ノルウェー領グリーンランドやオーストラリアで起きた数々の過ちが、自分たちのこととして感じられます。オーストラリアって、土地が痩せていて、羊や牛を育てるのに不適だということを、本書で初めて知りました。けれども、グリーンランドでもオーストラリアでも、入植民たちの故国イギリスの伝統に従って、牛や羊の飼育が続けられ、回復不可能なほど土地が痩せてしまったのです。さらに、オーストラリアでは、ヨーロッパから持ち込まれたキツネやウサギが、環境を著しく悪化させたそうです。
東京でも、いくら暑くなろうと、サラリーマンが取引先に挨拶に行くのに、背広に代えてアロハシャツを着ていくなどありえないでしょう。なまじだれもがエアコンを買えるために、ビルは建設され続け、ヒートアイランド化が進み続けるでしょう。なるほど、今は、五月初旬に何日か30度超、八月に十日ほどの36度超、といった程度ですが、十年後、二十年後に、五月初旬に36度、八月に40度になったら、どうなるでしょう。私たちが東京を放棄しなければならないときが、意外と早く来るかもしれません。
話題のベストセラー、評判通りとてもおもしろく、とても考えさせられました。