呪われた町 | 朝の書評

呪われた町

スティーヴン・キング, 永井 淳
呪われた町 (上)
スティーヴン・キング, 永井 淳
呪われた町 (下)
スティーブン・キング、ジョン・グリシャム、シドニー・シェルダンなどが矢継ぎ早に翻訳されどこの書店でも見かけるのはなぜなんだろうか。アメリカのベストセラー作家ばかりがこの国を呪縛しているのはどんな因果応報なんだろう? ヨーロッパやアジアや中東やアフリカではどんな面白い小説がベストセラーになっているんだろう? それはわかりませんが、ともかくも、これらハリウッド的単純明快なストーリーに生理的嫌悪感を持つ人もいるようです。
以前にアメリカで、ハリウッド映画のビデオをアメリカ人と一緒に見ていたら、クライマックスで、"It's Hollywood." とつぶやいて、それがちょっと小馬鹿にしたようなニュアンスらしいんですね。
この本は、吸血鬼物語の古典通りのストーリーだと巻末の解説に書いてあります。確かにそうですけれども、本当にそれだけ――つまり本当に紋切り型のお話なら(いくら日本がアメリカの植民地とは言え)ここまでベストセラーにはならないんじゃないかと思います。
とても読みやすいですが、アメリカの小さな田舎町の人々の暮らしが丁寧に織り込まれています。それから、プロットにも細かい気配りがされてあって、ページ毎に読者の気をそそる工夫が凝らされています。主要な登場人物のうちで、この人は最後まで生き残るだろうとか、この人は死んでほしくないなと感情移入した人から順に恐ろしい殺され方で殺されていきます。型通りに話を進めるように見えて、実は要所要所でそれを微妙に裏切るんですね。そう言えば、グリシャムもシェルダンもそういうところがあると思います。
ベストセラーを小馬鹿にするのは簡単ですが、決して侮れない技巧に満ちているようです。

264.中二階のある家を捜索する・其の十四
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00264.htm
276.技法と逸脱・其の五
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00276.htm