クリムゾンの迷宮 | 朝の書評

クリムゾンの迷宮

貴志 祐介
クリムゾンの迷宮

レビューには、お勧め度を示す☆印がついてたりなんかしますけれども、あれってどうなんでしょうかねえ。星ひとつの本の感想、わざわざ書く必要あるんでしょうか。お勧めの作品だけをレビューすればいいんじゃないでしょうか。今回取り上げる「クリムゾンの迷宮」は、間違いなくお勧めで、ほんと、おもしろくて、買ったその日に夜更かししてその夜のうちに最後まで読み切りました。

以下ネタバレを含むのでご注意!
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小説の面白さはいろいろあって、じっくり読んでいくうちにじわじわ感動が込み上げてくるものもあれば、とにかく先へ先へとページをめくるのがやめられないものもあります。クリムゾンの迷宮は、明らかにページをめくるのがやめられなくなるタイプの面白さです。
プロットは単純で、ゲームのルールが冒頭で明示され、それに従ってストーリーが展開していきます。伏線のような謎のような思わせぶりなモチーフがたくさん出てきますが、それらは大きく三つに分類できると思います。
第一には、普通の伏線で、ヒロインの女性がやや藪睨みだったり、補聴器をつけていたり、運動神経は良さそうなのによく躓いたりすることが冒頭から描写され、その秘密がラストで明かされます。
第二には、食料にまつわる秘密で、この謎は中盤であっさり明らかになります。
第三には、ある人物が、最初から話を仕切り、途中で不審な行動をすることです。彼はゲームマスターではないかと疑われますが、本当にそうなのか、そもそもゲームマスターとは何なのかについては、結局解明されないまま終わってしまいます。
上記第二、第三のミステリアスなモチーフは、いわゆる伏線にしてはあからさますぎます。かといって、推理小説的な謎とまでは言えません。推理小説における謎は、読者がじっくり読み込む必要がありますが、そういった本格的な謎ではなく、ラストで解明もされません。これらの伏線とも謎とも呼べないような中途半端なモチーフは、それぞれのページにおいて宙吊りのサスペンスをかもし出し、読者にページをめくらせ続ける香辛料のような働きをしているようです。

240.クリムゾンの迷宮は傑作か?・其の一
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00240.htm
242.クリムゾンの迷宮は傑作か?・其の三
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00242.htm
243.クリムゾンの迷宮は傑作か?・其の四
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00243.htm
331.原稿量産術考・其の九
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00331.htm