第42話:第3回(2007年)こども環境学会【論文・著作賞】

 

審査委員長 織田正昭(東京大学医学博士)

-(受賞者)塩川寿平 元静岡県立大学教授・大地教育研究所所長 著書『大地保育環境論』-



《総評》

第3回(2007年度)こども環境学会賞【論文・著作賞】は、精選された応募作品6点の中から、

塩川寿平氏の著書『大地保育環境論』と、

高橋鷹志氏の著書『子どもを育てるたてもの学』の2点が本賞として選ばれた。

例年のように分野が異なる10名の審査員が、それぞれの応募全論文・著作を読んで精査しコメント付きで評点をつけて、最終的に委員会での検討を経て決定したものである。



《こども環境論文・著作賞 & 授賞式》

近年中に完成し発表された研究論文および著作出版物であって、こども環境学の進歩寄与する優れたもの。授賞式と受賞者講演会は名古屋工業大学で行われました。 



《織田正昭審査委員長のコメント》



論文・著作賞 

塩川寿平(元静岡県立大学教授・大地教育研究所所長)『大地保育環境論(フレーベル館)』



塩川論文(著書)は、氏の50年にわたる保育現場での活動を踏まえた実践に、学問的視点をあてて普遍化を試み、理論的に体系立てたもので、おそらくこの分野で追従を許さない圧倒的な大作である。

本書は保育・・・と銘打ってあるが、単に保育という視点だけでなく、子どもとは何か、遊びの本質・原点とは何か、

自然とこどもの本能的な共存を含めて学ぶところはきわめて大きく、関係方面の専門家だけでなく、育児・保育期にある父・母・保護者の皆さんにも一読を勧めたい。

一審査員としても全く頭が下がる思いがする受賞作である。



《審査委員10名》

委員長 織田正昭(東京大学医学博士 国際保健・発達医科学)

委 員 飯島純夫(山梨大学医学部 公衆衛生・看護学)

委 員 清水将之(関西国際大学 児童精神医学)

委 員 住田正樹(放送大学 発達社会学)

委 員 高橋 勝(横浜国立大学 教育学)

委 員 寺本 潔(愛知教育大学 社会科教育)

委 員 夏秋英房(聖徳大学 児童学)

委 員 宮本文人(東京工業大学 建築学)

委 員 矢田 努(愛知産業大学 建築学)  以上10名



《関連資料:

塩川寿平氏著作 大地保育シリーズ4部作 フレーベル館出版》

塩川寿平先生の著書から

ジュッペちゃんの著書…あんなこと こんなこと(フレーベル館のホームページより)

名のない遊び(*電子書籍も有ります。)

フレーベル館発行の月刊保育雑誌『保育専科』
1973〜2002年)に、野中保育園の年間指導計画を執筆時のことです。保育実践をカメラに収めながら観察すればするほど、言葉では記録できない遊びが続々と泡のように生まれては消えていくではありませんか。写真でしか捉えることのできない生き生きとした子どもたちの姿でした。

“「自由保育=子ども主体の保育」とはこういうものだ!”と直感し、子どもの姿が見えた瞬間でした。この感激が忘れられず、今日に至るまで[名のない遊び]の研究を続けることになったのです。[名のない遊び]は、乳幼児が生きていくためになくてはならない「表出方法」と「表現方法」だったのです。



  https://www.froebel-kan.co.jp/book/detail/9784577811801/

 

 






どろんこ保育(*電子書籍も有ります。)

[どろんこ保育]は、土=自然とかかわる保育を通して人格を形成していく保育内容の総称です。[どろんこ保育=土とかかわる保育=自然とかかわる保育]というスタンスで、私は“土とかかわる保育”を広くまとめて書きました。

本書の背景には、私が育ってきた時代(1938年 昭和13年生まれ〜)の農村があります。戦後の民主主義という哲学は、私の住んでいた静岡県富士宮市野中村という地域共同体の中で生き生きと輝いていました。人々は支え合って田畑を耕し、大人も子どもも、一緒に働きました。子育ての面でも、村のみんなで育てる高いモラルが満ちていました。

『どろんこ保育』は、地域共同体の田植えの中から生まれたと言っても過言ではありません。




https://www.froebel-kan.co.jp/book/detail/9784577811962/

 

 







大地保育環境論【*こども環境学会賞(論文・著作賞)受賞作品】

子どもを大切にするということは[自由保育=子ども主体の保育]であり、同時に、
[大地保育]は大人も“童心人”となって、子どもたちと共に[子どもの独立国=夢を織る園]を創造するということではないかと思います。

『大地保育環境論』は、50年の歳月をかけて、“燃える使命感”と“現場保育士の情熱”を受けながら、渾身の力を振り絞って書き上げました。

大地保育4部作『名のない遊び』『どろんこ保育』『大地保育環境論』『コーナーのないコーナーの保育』は、私にとって《大義》でした。1冊1冊が、我が子のようです。



https://www.froebel-kan.co.jp/book/detail/9784577812112/

 

 








コーナーのないコーナーの保育(*電子書籍も有ります。)

園庭はどこでもコーナーになります。『コーナーのないコーナーの保育』は、コーナーにとらわれることのない[子ども主体]の保育活動を目指すものであり、コーナーは、保育者が与えるのではなく、子どもがつくり出すものという視点から生まれました。子どもの遊びはどんどん創造的・個性的・主体的に拡大して、保育者が考えている枠を大きく乗り越えていきます。

子どもの心の発達過程からみても、アニミズム期の子ども、メルヘン期の子どもの才能は、無限にコーナーを創造しています。
 
http://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-9871516592

 

 

 
コーナーのないコーナーの保育