犯人が出頭するまで、「年金テロ」と大々的に報道していた「元厚生次官宅・連続襲撃事件」。
マスコミは推理小説さながらに犯人探しをし、視聴率(発行部数)稼ぎのために大騒ぎしたが、
問題の本質を報道しているだろうか?


秋葉原殺傷事件、元厚生次官宅・連続襲撃事件、どちらの犯人も、生活に行き詰まり、
自分の将来に希望を持てず、死刑になるために犯行に及んでいるように思える。

「死刑制度」について「犯罪抑止効果」を唱える人間がいるが、
連続殺傷事件の犯人にとっては、絶望的な人生がこのまま続くよりも、
事件を起こして死刑になる方がむしろ「救い」になっているのではないか。
「日本で一番確実な自殺方法は死刑」と言えるのではないだろうか。


ここでは死刑制度の是非を議論したいのではない。

連続殺傷事件のような犯罪を増やさないためには、
セーフティーネットの充実と、
転落しても自立へと社会復帰できる支援を受けられる
社会にすべきだということである。


極限の貧困と言える「野宿生活者」の支援を行っている生田武志さんは、
『反貧困の学校』で次のように言っている。
野宿者・貧困問題の解決のためには「段差を作る」ことが、つまり
「衣食住」にわたる行政や市民の援助が必要だ、ということであります。
最下層に落ちてしまった人にとって、社会復帰までにはいくつもの壁がある。
その壁を本人の自助努力だけで超えることはほとんど不可能だ。
壁をひとつずつ乗り越えられるような「段差を作る」ことが、社会復帰には必須だと思う。


上記のような問題意識に比べて、
支持率の下がる首相の数々の問題発言、
視聴率の下がる民放各局(とNHK)の推理ドラマさながらのお祭り騒ぎ、
週刊誌も次のようなありさま。
 小泉容疑者に週刊誌が涙した訳 「元次官襲撃」が急展開 (JCAST)

首相やマスコミの人たちに決定的に欠けているものがあるとしたら、
それは「問題意識」だと思う。
この問題意識の欠如が、マスコミをつまらなくし、政策が世論から乖離していく原因だろう。


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(関連情報)
ブログ「私的スクラップ帳 」の記事
 「死刑容認81%:犯罪抑止の策は死刑制度以外に求めるべきだ