「麻生首相:消費税引き上げ訴え地方遊説 」 (毎日jp)
にあるように、麻生首相は
「景気を良くして、介護、福祉、医療に使わせてもらうため、ぜひ消費税を上げさせてください」
と発言している。

また、読売新聞は記事
 「社会保障目的税 財源確保への意義ある一歩(11月30日付・読売社説)
で、経済財政諮問会議の「中期プログラム」に賛同し、
 「社会保障制度を維持するために消費税率の引き上げはやむを得ない」
という意見を出している。


しかし、『反貧困の学校』を読むと、それが大嘘であることが分かる。
『反貧困の学校』から浦野広明さん (立正大学法学部教授) の意見を下に引用する。

① 消費税は社会保障のためではなく財界のため
税金の取り方は、日本国憲法上「応能負担原則」という考え以外にありません。つまり、負担能力に応じて負担するということです。
消費税の割合は、低所得者であるほど高い割合になります。
だから、今ある消費税は応能負担原則に反しており憲法違反の税だということになります。
<略>
消費税だけを社会保障費にあてるというのも本来おかしいわけです。<略>
道路特定財源の一般財源化するのはすべての税金を社会財源にすべきなのだから、あたりまえの話です。
<略>
つまり、庶民にとっては倍増、高額所得者にとっては減税となってしまったのです。
<略>

消費税を上げる必要があるのでしょうか?
さきほど申し上げたように消費税は憲法違反の税金です。
福祉のために必要だということで消費税を導入したのですが、これまでに約200兆円の消費税を集めて、同じくらいの法人税の減税を行ってきました。
消費税引き上げの本当の目的は何なのでしょうか?
消費税は多国籍企業、輸出企業、自動車電機関係に多額の利益をもたらす税金なのです。
<略>
トヨタは250億円が毎月、戻ってきているんです。(消費税を) 1円も払わないどころか戻ってきているのです。
これが財界の (そして企業献金を受けている政党の) 一番の消費税を上げる目的なんです。

② 日本の消費税はヨーロッパに比べて高い
消費税の税率はヨーロッパに比べて低いといわれますが、
日本は消費税率5%で国税比率は24.6%です。
ヨーロッパではイギリスは17.5%の消費税だが、国税に占める割合は23.7%。
これに対し、イタリアは消費税率20%で国税に占める割合は27.5%。
日本の消費税がいかに負担が高いということが分かります。
これはイギリスは生活必需品にはほとんどかけていないんです。
日本の消費税はいまでも世界の最高水準にあります。


「10年で65兆円の道路整備事業」を推進し、"道路特定財源の一般財源化に反対する"
道路族議員、都道府県知事および市町村長らが、
いかに国民から離れ、自分たちの利権のみ考えた政策を進めようとしているのか、
上記から明らかではないだろうか。

道路、ダム、空港など大型公共工事も「社会投資」であるなら、
医療、教育、生活保護などの社会保障も「社会投資」であるはずだ。
なぜ、毎年約6兆円もの税金をかけて道路を作ろうとしているのに、
医療費を毎年2200億円も削減しているのか。


GDP世界第2位でありながら、日本の社会保障への支出は「先進国で最低」だ。

具体的な数字を、『反貧困の学校』と日弁連
 貧困の連鎖を断ち切り、すべての人の尊厳に値する生存を実現することを求める決議 (日弁連)
から引用する。

- 保育、就学前教育などの「家族関係支出」 (子育て支援) の対GDP比 (OECD基準、03年)は、
 スウェーデン 3.54%、フランス 3.02%、ドイツ 2.01%、日本 0.75% とダントツに低い。
- OECDによると、その国の平均的な世帯所得の半分以下しかない人の比率を示す「貧困率」は、
 日本は15.3%(2000年)である。これは、加盟国27か国中第5位の高率であり、
 デンマーク、スウェーデンなど北欧諸国の3倍であり、しかも、年々増加する傾向にある
- 生活保護制度を利用し得る人のうち現に制度を利用できている人が占める割合を示す「捕捉率」は、
 欧米では少なくとも50%以上であるといわれており、ドイツでは 70%以上、イギリスでも80%を超えている。
 これに対し、日本の行政はそもそも「捕捉率」を含む貧困調査を行っていないため正確な数値は不明だが、
 わが 国の「捕捉率」について、駒村康平東洋大学教授は1999年で約20%と推計し
 (「週刊社会保障」2002年11月4日号24頁『セーフティネットの再構 築』)、
 唐鎌直義専修大学教授は約16%と推計している
 (「ポリティーク」2005年9月号70頁『中年家族持ちワーキングプアの生活と社会保障改 革』)。


日本の生活保護、教育、子育て、失業手当、などいずれの社会保障費もヨーロッパに比べて低い、
という事実を知るとき、社会保障と税金について、あらためて考え直す時に来ていると思う。


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(関連サイト)
消費税をなくす全国の会「消費税 Q&A」
→ 日弁連「貧困の連鎖を断ち切り、すべての人の尊厳に値する生存を実現することを求める決議