上下2段組み、400ページもの大著で、「読むのが大変だった」というのが最初の感想。
だが、第3部「ノー・ジョブ」、第4部「ノー・ロゴ」は、目が覚めるような内容で一気に読むことができた。

9.11テロ事件後、愛国心の盛り上がりでアフガニスタン、イラクへ侵攻したアメリカ国民を憎む気持ちが心の奥に芽生えていた。
しかし、本書に描かれた、高校生、大学生らに広がった反企業活動を知り、日本の方が無知な人間が多いのではないか、と反省することしきりだった。


世界的に有名なブランド企業が、中国などの第3国で若い女性や子供たちに奴隷とも言える低賃金、長時間労働、劣悪な労働環境で仕事をさせていることは、日本のマスコミで報道されたことがあるだろうか?

ナオミ・クラインは「最強ブランドが最悪の職を生んでいる」と書いているが、本書で明らかにされた事実を読み、
何も知らずにブランド商品を買っていた自分に対して非常な憤りを感じた。
企業重役と有名人はとてつもない大金を懐に入れ、数十億ドルをブランド戦略と広告につぎこむ。しかしその金は、スラム、汚い工場、カビテのような土地で必死に生きようとする若い女性たちの悲惨な状況と絶望から生まれているのだ。
さらに、この奴隷労働に反対する活動を起こしたアメリカ人が数多くいることを知り、アメリカに対するイメージが変わった。
むしろ、ブランドの大量消費国である日本で、このような事実を知らない人が多いということは、恥ずべきことではないだろうか。


また、本書には「派遣労働者の底なしの怒りを代弁する」や「終身派遣社員」という言葉が出てくる。
日本の派遣社員も、まさに同じ状況になっているように感じる。


残念ながら、本書は絶版となっているので、古本か図書館で借りて欲しい。

ナオミ クライン(著)『ブランドなんか、いらない―搾取で巨大化する大企業の非情』