釜ヶ崎(あいりん地区)で20年以上に渡って日雇い労働者、野宿生活者の支援活動を 行ってきた著者が書いただけあって、その内容は非常に重く、日雇い労働者、 野宿生活者のあまりに悲惨な状況を知り、先を読み進めることができなくなることが 度々あった。

「夜回りに参加した高校生が路上死した野宿者を発見し、宿舎に帰ってから泣き出してパニックになった」という箇所と、「おわりに」に書かれたホームレス襲撃事件の個所では、 あまりの悲惨さに涙が止まらなかった。

「『国境なき医師団』がここ数年、日本の野宿者の医療問題に関わっており、先進国での診療所開設は異例」と書かれた箇所を読み、日本人として非常に恥ずかしいと思う。
ダムや道路など公共工事には大規模な予算を組む一方で、国内の弱者は支援しないという状況に非常な憤りを感じる。

さらに憤りを感じるのは、これらの人達を食い物にする、暴力団、悪徳病院などの 存在、若者による襲撃事件である。本来、社会的弱者を守り支援するべき警察や福祉事務所から支援を受けることができず、一般市民からも排除され、社会全体でこれら弱者を追い詰めている。

年金、介護、医療が崩壊し、生活保護も受けにくい状況は、本来国が保障すべきセーフティーネットが機能しておらず、国民が健康的で文化的な最低限の生活を保障する憲法第25条に違反していると思う。
その一方で、軍備や公共工事には湯水のように税金を使い、一部の議員、官僚に 金が流れていく。
こんな日本で良いのだろうか?

この本をきっかけに、一人でも多くの人に貧困問題、格差社会について考えてもらいと思う。

ルポ最底辺―不安定就労と野宿 (ちくま新書 673)/生田 武志
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