マキが運転する車に揺られ、ユウキは自分の過去を思いだしていた。
小さいころのユウキは母親の暴力に怯えていた。
いつも母親の機嫌を伺っていた。
父親はそれから目を背けていたようで、何も言わずいつも読書をしていた。
更に学校ではいじめられていて、いつも独りぼっちだた。
勉強もスポーツもダメで、馬鹿にされていた。
そんなユウキを支えたのは、漫画やアニメの空想の世界だった。
幼いユウキは、
「いつかきっと漫画の主人公みたいな存在が助けに来てくれる。」
本気でそう考えていた。
だが現実は、そんなユウキを踏みにじった。
ユウキに出来ることは更なる空想を持つことだけだった。
それは時間とともに、どんどん大きくなり、膨らんでいった。
そんなある日、ユウキはある才能に目覚めた。
それが「生物の痛みを操る。」という能力だった。
生物は自身の体験の中で痛い目にあうと、学習してそれを避けるようになる習性がある。
それは人間も同じだ。
ユウキは復讐のために能力を使い、人を殺した。
その時からユウキは「この世界に助けなどない。」と考えるようになった。
ユウキは学校を社会の縮図と考え、
世の中は「金・権力・戦争」で成り立っているということを学んだ。
ユウキはその世界で生き残る方法を考えた。
そのためには、人間について研究しなくてはならない。
ユウキは馬鹿にされたり嫌がらせを受けたり暴力を受けた体験から色々考えた。
まず、そういう奴らは絶対一人では来ない。だいたい3人以上の複数だ。
そしてユウキに暴力を振るうことを楽しむ。いつも笑っている。
皆で団結して仲間外れの悪を倒す、という共同作業なのだろう。
ユウキは直感的に分かった。
そいつらの弱点こそが、仲間外れにされる、ということ。
ユウキに対する攻撃こそ、そいつらの弱点なのだ。
それはなぜかというと、簡単な話。
攻撃者自身がそれが有効な手段だと考えているからだ。
有効な攻撃だと自分で考えているから、自分が同じ攻撃を受けた時、それを「痛い。」と思う。
分からなくて、なんとも思ってなければ、なにも感じない。
生きている限り、誰にでも「痛み」はある。失敗したり、恐れたり。
それはユウキにも言えることだが・・・・・・。
しかしそのことさえ分かっていれば、そこを突いて敵を倒すことは簡単だ。
それがユウキの人生哲学だ。
「アパートに着いた。」
マキがユウキに言った。
寝てた?と質問してきたので、ユウキは寝てないよ、と答えた。