俺はユウキ。

勇気と書けば格好よく見えるが、現実にはそうではない。

俺ははっきり言って弱者の部類に入るだろう。

だからいつも、世界とのバランスに気を配っていた。

出る杭は打たれるし、存在感が無ければ無視される。

それに、俺には特殊な才能があった。

それを自覚したのは、子供の頃いじめに遭っている時だった。

相手は俺を殴ろうとした。

その時、そいつは殴ろうとした腕を抱えて、うめき声をあげてしゃがみこんだ。


俺は、生物の「痛み」を操作できる。


「痛み」には程度があるが、有りすぎると痛いし、無くなっても困る。

有りすぎると、あまりの痛みに発狂する。

無ければ、感覚が無くなって麻痺したように感じる。動かせなくなる。

少し前の戦争では、こういった特殊な才能を超能力者として扱い、戦場へ送り込んだという。

だとしたら、俺は自分の意志で痛みを制御する、念力超能力者なのだろう。


最初は、この能力を差別する人間がたくさんいて、それを呪った。

孤独だった。

しかし、振り返ってみれば、この「痛み」こそが俺の最大の友人であることに気づいた。


そして俺は大人になり、超能力もバランス良く制御できるようになった。

俺はなるべく人と接しない仕事を求めた。

そんな時だった。


「あなたのその能力を活かして、世界の平和に役立ててみない?」


国家機密。

超能力技術研究センターのナツキという女が、俺を訪ねてきた。


「それなりの報酬もあるわよ。悪い話じゃないと思うけど。」


確かに提示された報酬は悪くなかった。

しかし、自分が戦争の役に立てるのかは心配だった。


「わかりました。協力します。」

ユウキは決断した。



ユウキ。

彼もまた兵器として扱われる超能力者としての結果を選んだのであった。