拝啓

 お元気ですか?こちらではもう小鳥のさえずりが聞こえます。

 先日はありがとうございました。お陰様で本当に助かりました。他の方が言っていたのですが、りえという名前なのですね。素敵です。どのような漢字で書くのでしょうか?お返事待ってます。

季節の変わり目です。お体にお気をつけください。

敬具




お手紙ありがとうございます。

こちらは雪が溶けています。

こちらこそありがとうございます。あなたが助かったのなら私も嬉しいです。

りえの漢字は、わかりません。母に小さい時に何回かいてもらったのですが、かけませんでした。漢字が苦手なのもありますが、むずしい漢字だったようにおもいます。母は亡くなってしまい、私の本当の名前は失われてしまいました。その後いくつか親せきの所へ行きましたが、母は親せきと関係を持てておらず、誰も私のことすら知りませんでした。私も自分の名前を知りたいです。

巡←漢字合ってますか?はなんと読むのでしょうか。私もあなたの事を名前で呼びたいです。教えてください。





拝啓

 桜もすっかり散って緑の季節の始まりが見えてきました。


お返事ありがとうございます。

お母様は亡くなっていらしたのですね。大変失礼なことをお聞きしてしまいました。不躾をお許しください。

お母様は日本の方では無かったと以前お聞きしました。その中貴方が日本に来ることを見越して日本名を付けたのでしょうか。先が見えていることは凄いことです。本当に尊敬します。私の母は、私の顔が両親どちらともに驚くほど似ていなかったのであまり私を好き好んでいないようでした。笑

もし、自身の漢字を知りたいのなら、市役所などに記録されているのではと思います。詳しいことはよく分からないのですが、もしお時間があれば聞いてみてください。

私の名前は巡と書いてめぐると読みます。叔父が名付けてくれたといくらか前に聞きました。ほとんど海外にいて、あまり関わったことの無い人なので、少し寂しいような気もします。

またお返事ください。


敬具



こんにちは。

私はハーフで巡さんと同じ様に叔父がつけてくれたと言っていたような気がします。一緒でうれしいです。そういえば、私の父はそうなんですが、叔父も貴方と一緒の日本人でした。でも父と会ったこと無いです。

母はポーランド人で私を1人で育ててくれました。母は夜きんで忙しかったので手紙ノートというのを作ってやり取りしていました。今となってはなつかしい思い出です。珍しく家にいる時はりえ、りえと何度も名を読んでくれました。市役所で確認できると聞き、嬉しいです。これを書き終わったらすぐに行きます。本当にありがとう。また合えますか。

その日を楽しみにしています。ではまた。




こんばんわ。今は夜です。1週間ほど前に手紙をお送りし、また追って書いています。

あの後すぐに市役所に行きました。本当に地に足がついてないような浮かれようでした。

そして、市役所の役員さんに伺った所、すぐに対応してもらえました。そして私の名前を見せてもらえたのですが、私はここから書くのが辛いです。1週間経った今でも手が震えています。私、どうすればいいのかわかりません。まず、ファイルを見せていただいたところ、私の名前はりえではありませんでした。

私の名前は馨(何度も練習しましたが、大人になってもやっぱりむずかしいです。間違っていたらごめんなさい。)と書いて、かおるでした。25年以上生きて、信じていた自分自身の1番大切な部分を否定された気分です。どうして名前をかん違いしていたのでしょうか。

 これは、考えたくもない事なのですが、もしかして母は私に、ずっと同じ言葉を投げかけていたのではと思います。よく思い返してみると、思い当たる節があるのです。私はダブルリミテッドでポーランド語も日本語も上手くないです。かん違いかもしれません。母は私にdieと言っていたのではと思います。ポーランド語で「りえ」と近い様な発音です。

dieの意味を書きたくありません。英語と同じ意味です。頭の良い巡さんならわかると思います。思い返せば、母は私のことを嫌っていたように見えることもありました。何度も叩かれたような気もします。

本当の名前が違っていただけで大げさかもしれませんが、私にとってすごく大きなことです。もし、本当に母が私にひどい言葉を言ってていて、それを自分の名前だとかん違いしていたのならば、私は生きていけるのでしょうか。こんなみっともない私でも、生きていけるのでしょうか。

私の記憶の中の母はとても美しい姿でした。

思い過ごしであることを望みます。

しばらく休みます。さよなら。




拝啓

 アブラゼミの声がこだまして聞こえます。燃え盛る日にお手紙ありがとうございます。そちらはどうですか。

 お手紙読みました。私もといっていいのか、なんと言ったらいいのか分かりません。沢山の感情が混ざりあって、失礼かと思いますが、苦しいです。1番辛いのは貴方なのに。もし万一に、貴方のお母様が貴方に対し、心無いことを言っていてそれを名前だと勘違いしていたのなら、本当に言いようのない、幼少の純粋な貴方に漬け込む残酷なことでしょう。勘違いする程投げかけられたその言葉が、あの最悪の言葉でないことを望みます。ですが決して貴方のせいではありません。1番酷いのは私だった。市役所に行けなどと言わなかったら、真実はどちらにせよあなたのお母様は揺るがず美しいままだったでしょう。本当にごめんなさい。

是非また会って心からの謝罪をさせてください。


私は貴方をなんとお呼びすれば良いのでしょうか。差し支えなければ教えてください。


いい日になりますように。

敬具




こんにちは。こちらも暑くなっています。

そんなに謝らないでほしいです。巡さんは私を喜ばせようとして提案してくれたので、感しゃしています。巡さんの手紙には、消し残した後がたくさんついていて、どうやって書けばいいのか考えた後があって嬉しかったです。

私のことは馨でよいです。また新しい名前で生き直します。すごくと気持ちも落ち着いて、新鮮な気持ちです。

これは余談(使い方あってますか)ですが、私の名前を名付けてくれた叔父はよく私のとこに居たのですが、「香りが巡り会うように付けたんだよ」とよく言っていました。私はよく意味がわからなかったのですが、運命をかんじ、嬉しいです。私はいつでも合えるので、巡さんの予定に合わせてください。

お返事ください。さよなら。




前置きを省かせて頂きます。

先日送って頂いた馨さんのお手紙を、貴方の叔父の言葉を読んで、私は重大なことに気づいたかもしれません。いや、これは確信です。

今すぐに会いましょう。2日後の便が取れたのでお手紙の住所を元に、ポーランドへ行きます。この手紙より私が早く着くのでしょうか。とにかく会わねばなりません。

貴方へ、馨へ会いに行きます。


では、次会う時まで。