デイトナ24時間、セブリング12時間を擁するアメリカのプロトタイプスポーツカーレース、それがIMSAのUSCC(WSCC)。歴史は長く、日本車メーカーとの関わりも多いアメリカンプロトタイプカーレースだが日本語の情報が少ない。なので一から知りたいという人に、なるべく知っていること・調べて分かったこと全部書いてこの一箇所にまとめておくことにした。


IMSAはアメリカのメジャーレースの中では欧州との関わりが深い。もともと欧州的なレース文化の受け皿になったのはスポーツカーレースであり、その発展がCART・チャンプカーがロードレースを取り入れることになった遠因にもなっている。一方でよりNASCARの成功にあやかろうとアメリカの独自性を強く打ち出す勢力たちの分離・独立によりアメリカンスポーツカーレースの衰退を招いた時期もあった。

一国随一の混走レースということや、独自の規格とグローバルな規格の車両を同クラスで混走させているところなどは、スーパーGTに似ている点が多い。一方で現在のUSCCは、どのクラスもイコールコンディションを重視している点、黄旗運用の方法、ポイントシステムなどを見ると、同じプロトタイプカーレースのWECよりも、NASCARに近い性格を持つレースだとも言える。



Autoweekより。

○シリーズの名称について

2015年でデイトナ24時間の冠スポンサーのロレックスの高級ブランドである、チュードルがシリーズの冠スポンサーから撤退。ポルシェGTのスポンサーでもあった、自動車部品メーカーのウェザーテックが冠スポンサーとなった。

その結果正式名称が
Tudor United Sportscar Championship
(チュードル・ユナイテッド・スポーツカー・チャンピオンシップ)

から

IMSA Weathertech Sportscar Championship
(イムサ・ウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップ)

へと名称が変わり、略称もTUSCからIWSC、IWTC、WSCC、WTSCなどに変わった。そう、略称がめちゃくちゃ多い。
IMSAは運営団体の名称。つまりUSCCはIMSAの運営するレースの1つにすぎないのだが、昔から今に至るまでシリーズ名がコロコロ変わりまくってるし、現在も統一された略称がないので、検索には「IMSA」を用いると便利。


※余談だがグランダム・ロードレーシングというのは組織名で、一般的に言われているグランダム主催のプロトレースの正式名称は『ロレックス・スポーツカーシリーズ』である。グランダムはこれ以外にもCTSCやフェラーリチャレンジ、二輪レースなども主催していた。NASCARがカップ戦だけでなく、全米のストックカーを統括する組織の名前なのと同じ。ちなみにINDYCARもIRLから改称した組織名。



○クラス分け

P/PC/GTLM/GTD の4つに分かれている。
タイヤはGTLMがミシュラン、それ以外はコンチネンタル。
P/GTLMはプロドライバー(プラチナ/ゴールド)向け、PC/GTDはアマドライバー(シルバー・ブロンズ)向けクラスという区分けがされており、前者は、後者はでミラー、翼端板、側灯、カーナンバーの背景の色がそれぞれ塗られている。
ここではプロアマ分けて解説していく。


プロドライバー向けのクラス
ドライバーのカテゴリに縛りはなく、全員プラチナで揃えることも可能。
年間通して最も成績優秀だったプロアマペアには、ジム・トゥルーマン賞、ボブ・アキン賞がそれぞれ贈られる。前者はル・マン24時間のLMP2、後者はLMGTE-AMクラスへのエントリー権をそれぞれ得られるため、それを狙ってアマチュアドライバーが参戦している場合もある。


○Pクラス(プロトタイプ)
デイトナプロト(DP)とLMP2の混走。
ここではデイトナプロトについて重点的に述べる。

2000年にアメリカン・ル・マン・シリーズに対抗して創設されたグランダム・ロード・レーシングは、コンクリート壁に囲まれたデイトナでの安全性と、エントラント招致のためのコストダウンを両立するため、NASCARと同じパイプフレームのクローズドプロトを作った。それがデイトナプロト。
形状から分かるようにトップスピードが伸びやすく、2013年にはライリー・フォードが222.971mph(時速356km)を計測した。しかし統合後はLMP2との兼ね合いから190mph(時速304km)に落とされている。なお現在の最大馬力は600hp。

GT300チームタイトルを獲得したムーンクラフトの紫電のベース車両は、ライリーのデイトナプロトというのは有名な話。


コルベットに造形を似せたコルベットDP。中身はストックカーのようなもの。http://www.motorsport.com/imsa/news/rolex-24-at-daytona-prototype-field-rundown-photos/ より。


かなりコストに気を遣っており、

・エンジンは市販車のものを使用(排気量の微変更はOK)
・シャーシコンストラクターは運営の指定したところに制限
・性能調整を行うことがある
・エンジンに作用するTCSは許可、ABSは禁止。


その他にも様々な点において技術的な厳しい制約がある。これらのことから、デイトナプロトが速さ以前にコンセプトの時点で完全にLMP2と同格であることが分かる(LMP2も市販車のエンジンを使用するし、性能調整を行うことがある)。大金をつぎ込んでバンバン開発してえげつないマシンを作るLMP1-Hとは対照的だ。

マルチメイクでありながら、性能をなるべく均一にするため規制を厳しくするという思想はNASCARのエンジンに通じるところがある。というかグランダム自体がNASCARを創設したフランス家を頼って発足したシリーズであるため、デイトナプロトがNASCAR的思想の元にできたのも当然と言える(一応IMSAも1969年にフランス家を頼って創設されたが、思想までは受け継いでいない)。

デイトナプロトが「ローテクマシン」みたいな言われ方をされてしまうのはそのため。かつてアメリカにもCan-Amというヨーロッパ以上に自由な開発競争のプロトがあったが、デイトナプロトはその真逆を行っている。NASCAR流の誰でも参加&平等に競争を強く反映しているというわけだが、LMP1-Hのような大金を注ぎ込んだメーカーのガチンコ開発バトルや回生のような最先端技術を見たい層には不満の声がある。
ただ低コストだからこそ独立系コンストラクターが大量参入する余地があるわけで、来年導入される新規格のDPiがハマれば人気が復活する可能性も秘めている。

LMP2車両の自由度については欧州のLMP2より緩く、マツダのディーゼル車やデルタウィングなどの珍車が有名。逆に言うと、珍車を走らせるならIMSAである。アメリカンル・マン時代もジネッタ・ザイテック製のハイブリッドカーがあったし、アメリカンスポーツカーの多様性はGT300に通ずるモノがある。


2台体制ながらシャーシのアップデートもせずにskyactiveの文字を塗りたくり、GTには抜かれまくり、そのくせ映像には映りまくるし、オンボードもライブストリームする。もはやサーキットの宣伝バスと化したマツダLMP2。2016年はエンジンをガソリンターボに変えてPPを獲る活躍を見せているが、なかなか勝利に結びつかない。(http://mzracing.jp/americanracing/802)より。



○GTLMクラス(GTルマンクラス)
ACOの性能調整に基づいたLM-GTEを用いるが、クラス名はGTLMなので注意。シボレー、BMWなどWECではあまり見られないGTEがワークス体制で走っている。
最高速は180mph(時速289km)、最大馬力は500hp。

BMWチームRLL(レイホール・レターマン・ラニガン)のM6 。GT3をベースにアメリカで開発・運用されており、一見するとGT3と見分けがつかない。厳密には先代のZ4ともどもLM-GTE規格に沿ったマシンではなく、つまりIMSAの特認車。http://www.motorsport.com/imsa/news/rolex-24-at-daytona-prototype-field-rundown-photos/


WEC同様タイヤは自由なので、4クラス中唯一タイヤのマニュファクチャラータイトルがある。
ミシュランユーザーしかいないので一本化された。
2015年まではミシュラン以外にファルケンのワークスのポルシェが走っていた。競争前提で開発されたミシュランはワンメイク前提のコンチネンタルより遥かに優秀で、2015年の豪雨のプチル・マンではPクラスをさしおいてGTLMが総合1-2フィニッシュ達成、また2016年の雨のデイトナでもGTLMが予選総合トップという珍事が発生した。


☆アマチュアドライバー向けのクラス
シルバーまたはブロンズドライバー(=アマチュアドライバー)を最低1人、長時間のレースでは2人乗せなければならない。

○PCクラス (プロトタイプ・チャレンジ)
エンジンはシボレー製6.2リッターV8、シャーシはオレカFLM09。4クラス中唯一エンジン・シャーシともにワンメイクのクラス。最高速175mph(時速280km)、最大馬力は430hp。

 

 

 

オープントップ(ロードスター、スパイダー)型のプロトタイプカーは近年稀少になりつつあるので、好きな人は要チェックだ。http://8starmotorsports.com/wp-content/uploads/2014/06/060614_KC_BC_191028.jpg より

FLM09は元々LMP2マシンをベースに、フォーミュラ・ル・マンというプロトタイプカーの入門的シリーズのマシンとして作られた。シャーシ名のFLMはその名残。その後各ル・マンシリーズの1クラスとしてLMPCの名で組み込まれた。2015年にヨーロピアン&アジアンル・マンのLMPCはシャーシマルチメイクのLMP3へ移行したが、IMSAはそれに追随せず、2017年から段階的にPCクラス自体を廃止することにした。ただしスプリントレース限定で、後述のPCライツにとって代わったLMP3マシンが走れることになりそうだ。

完全ワンメイクなので、車種の多様性を好むスポーツカーレースのファンからは最も不人気なクラス。価格を抑えるためにエンジンもシャーシも7年間ずっと同じなので、その間の開発は信頼性や安全性向上以外は殆どしていないだろうと思われる。GTLM、GTDよりも最大馬力は低いが、空力面や信頼性では優れる。
ABSはもちろんTCSすらついていないため、アマチュアが操るには大変なマシンのようで、黄旗の原因を作ることも多い。


○GTDクラス(GTデイトナ)
世界的な人気を誇るGT3のクラス。最高速は180mph(時速289km)、最大馬力は450hp。
なおLM-GTEとGT3が混走するレースは2016年現在、IMSAだけである。
チームはセミワークス系が多い。


ライリーとダッヂのタッグで参戦している、ダッヂ・バイパーSRT。http://www.motorsport.com/team/riley-motorsports/news/ より。


名前が違うだけあって、GT3とGTDは全く同じ規格ではない。グランダムからの移行期間ということで、2015年まではGT3以外にもポルシェのワンメイクレース用マシン(カップカー)に独自のパーツと性能調整が与えられて、GT3同等のバトルができるようにされていた。カップカーに合わせるため、GT3車両もダウンフォースを削られたり、ABSの使用を禁止されるなどした。

2016年には出場可能なのはGT3のみとなり、規約自体も極めてGT3に近くなった。違うのはギアセッティングをデイトナ、インターミディエイト、ショート・ストリートの3つ設定することが可能なところ(通常GT3は買った状態からギア比をいじれない)。また重量増と馬力減が図られており、GTLMとの性能差が開くような調整がなされている。

4クラス中一番下とされながらも、4クラス中最もマニュファクチャラーの競争が激しいクラスとなっており、ワークス化が進んでいる。そのため北米版ブランパンとも言える位置づけになりつつある。

LM-GTEとGT3の特徴や違いについては別の記事にまとめたのでぜひ参照して欲しい。


○レースフォーマット
全て時間制だが、スプリントも耐久も両方あるのが他のル・マン関連シリーズとの最大の違い。

全4クラスで混走することもあれば、1クラスお休みで3クラスだけのレースもある。やはりチームにとっては1レース増えるだけでも金銭的な負担が大きいわけで、これはイベント自体の数を減らさずにチームの負担を減らすうまいやり方だと思う。

また4クラスが出場するイベントでも、全クラス一斉のこともあれば、第1レースでPクラスとGTLM、第1レースでPCとGTDがというように分かれて走ることもあり、このへんはかなり柔軟。

例外的にPクラスが休場するイベントでは、代わりにPCの弟分であるプロトタイプLitesなるマシンが一緒に走る。これはF3にカウルをかぶせたような外観で、パノス傘下のエラン製シャーシに排気量2リッター程度のマツダ製エンジンを搭載し、クーパータイヤを履いている。
なお前述の通りLitesは2018年にLMP3が取って代わり、廃止されるPCクラスの代わりにIMSAのスプリントレースの多くに参戦することが決定している。

今は亡き富士GCのような趣。F3同様、インダクションポッドが片側についている。http://www.motorsport.com/imsa-others/news/seven-tracks-14-races-for-cooper-tires-prototype-lites-powered-by-mazda/より。


○黄旗の処理について
WECとは異なりVSCや区間黄旗が存在しせず、黄旗は必ずフルコースコーションとなる。つまりNASCARと同様である。黄旗が出るとピットは閉じられる。ペースカーが出て隊列を整えてからP/PCクラスがピットに入ることを許され、その次の周にGTLM/GTDがピットに入れる。

IMSAはラップ・ダウン・ウェーブ・バイといって、NASCARでいうところのウェーブ・アラウンドと同じ、周回遅れへの救済措置もある。もし自分がそのクラスのリードラップと同一周回でなく、リードラップの車が全てピットインした場合、自分はピットインせずにステイアウトすればペースカーの前に出て一周して周回数を取り戻して良いのだ。
なお、最後のグリーンフラッグから15分以内や、チェッカーフラッグの30分以内のコーションの場合は、時間短縮のためピットインは全クラス一斉に行われ、またウェーブバイは発動できない。また2時間30分未満のレースではウェーブバイは行えず、2時間30分から6時間以内のレースでウェーブバイできるのは一度だけである。

デブリイエロー(ショートイエロー)と言って、黄旗の原因がデブリの除去やマシンの牽引のみに留まる場合、ウェーブバイだけ行われ、ピットは黄旗中ずっとクローズされたままになる。


黄旗処理の手順はグランダムからの引き継ぎであるため、アメリカン・ル・マンからのファンには評判が良くない。
特に2014年のセブリング12時間の半分は黄旗で、「フルコースコーション・チャンピオンシップ」と揶揄する声も聞かれた。セブリングはただでさえ一周が長い上、通常のコーションはきちんと手順を踏むと何周もする必要があるので、ムダにコーションが長くなってしまう。だからすごくダレやすい。そのことにイライラしているプロトファンはとても多い。

その反面黄旗が沢山出ることで常に接近したバトルが楽しめるのも事実で、一概に悪いとも言えない。むしろNASCAR同様コーション連発を前提とした戦略を楽しむ文化で、そのおかげで、24時間レースで差が数秒もないトップ争いを毎年見ることができる。
このコーションを入れまくるという文化は特にF1好きにはなかなか理解してもらえないのだが、アメリカの自動車レースではなんど接近しても引き離すやつこそ真に速いということだ。実際、速いドライバー(マシン)や強いチームはは何度コーションがあっても確実に上がってきて、勝つ。逆に弱いチームは、何度コーションの幸運があっても勝てない。

長所と短所が非常にハッキリしているため、アメリカンレース最大の「特徴」と呼べるのがこの黄旗運用だ。つまりこのルールの好き嫌いがアメリカンレースの好き嫌いに直結するということでもある。


全戦チェックするのは大変という方へ。
NAEC(North American Endurance Cup)と呼ばれるレース群がIMSAには存在する。注目度の高いこの4戦に絞れば、IMSAをチェックするのはかなり楽になる。

①デイトナ24時間
24時間レースとしては1966年が初開催。世界三大耐久レースの一角であり、インディ500やデイトナ500に並ぶアメリカの目玉レース。デイトナ・インターナショナル・スピードウェイのインフィールド(ロードとオーバルで『ローバル』と呼ばれる)を用いて毎年1月下旬に開催される。一時は100台を超えるエントリーを誇ったこともあるビッグイベント。他のスポーツやレースがオフシーズン中ということもあり、普段の何倍もの人がTV観戦する。

ロレックスが冠スポンサーで、「ロレックス24時間」とも呼ばれる。グランダムとアメリカンル・マンの分裂期は、グランダムの目玉レースだった。反面デイトナ24以外はアメリカンル・マンほどの人気は出ず、その意味ではインディ500頼りのインディカーみたいなもんだった。

ハイバンクのGや1コーナーのフルブレーキング、海からの潮風などが車やドライバーに負担を与え続けるため、ル・マンよりも過酷とされる。一方夜間走行に関しては、オーバルの特性を生かして綺麗なライトアップがきちんとされるため、ル・マンほど危険ではない。とてもスリリングな高速サーキットで、個人的にはNAEC中最も好きなサーキットだ。

オフシーズンのインディカー・NASCAR・WECから多数ドライバーがスポット参戦しており、2015年に事故死したジャスティン・ウィルソンを筆頭に多くの著名なドライバーがデイトナを制している。
日本人では1992年に星野、長谷見、鈴木が日産R91CPとともに、最多リードラップ記録を塗り替えて優勝している。最近だと2014年に藤井誠暢と星野敏、2013年には寺田陽次郎が参戦した。その前に遡ると2005年にThe Races Groupが井上隆智穂を始めとする5人の日本人を揃えて参戦。2003年には田中哲也、2002年には鈴木タカシ(漢字が分からない)。2001年だけ圧倒的に多く、イエローマジックが密山祥吾、山路慎一、鈴木利男、高橋毅の4人を揃えたのを始め、荒聖治、羽根幸浩、鈴木タカシ、高橋キイチ(漢字がry)の計8名が参戦している。

他のレースはオフシーズン中なので見やすいし、シーズン開幕を待たずに新型のLM-GTEやGT3が見られるのは嬉しい。


②セブリング12時間
12時間レースとしては1952年が初開催。廃空港を用いたサーキットで、毎年3月に開催。自動車部品メーカーのMobil 1が冠スポンサー。夕陽が綺麗。特筆すべきはサーキットの多くを占めるコンクリート路面とバンピーな凸凹路面で、「身も凍るようなブレーキング」が肝。ドライバーによってはルマンやデイトナより過酷だという。マシンの耐久力を試される路面と冬でも暖かい気候から、インディカーの冬期テストが行われることが多い。かつては黎明期のF1や、F1の前身となるグランプリ・モーターレーシングが開催されたこともある。

デイトナ24時間に並ぶビッグイベントで、ル・マンと併せて「世界三大クラシックスポーツカー耐久レース」と呼ぶとか。
世界選手権に組み込まれたり離れたりを繰り返している。グランダムとの分裂時代はアメリカンル・マンの目玉レースだった。デイトナ24時間の日本語版wikiには「LMPが出場できるALMSのセブリング12時間の知名度が上昇するのと相対的にこのレースの世界的地位が下がったとも言われる。」という記述があるが、統合してデイトナにもLMPやLMGTEも参戦できるようになった今では全然そんなことはなくなっており、むしろセブリングの方がおまけレース感がある。シーズン開幕の3月とあって、ドライバーのバラエティでデイトナに勝てないのも痛い。

2016年は井原慶子が参戦。遡ると、WECの一戦に入っていた2012年の井原を除けば過去2003年の下田隼成まで遡る必要がある。その近辺だと2002年に寺田、2001年に加藤寛規も参戦している。


③ワトキンス・グレン6時間
1948年から開催されていたNY市街地の100マイルレースで、観衆の死者が立て続けに出たために、新たに郊外にサーキットを建設して行ったのがルーツ。6時間レースとしては1968年が初開催だが、それ以降も主催者がなかなか定まらず、3時間レースや500マイルレースとしての開催年が多かった。毎年6月末に開催。
サーキットの正式名称は「ワトンキンス・グレン・インターナショナル」で、サーキットもスピードウェイもつかない。愛称は「ザ・グレン」。ロードコースでありながら、ほとんどのコーナーにバンク角がついており、首に厳しい。アップダウンが激しく、コース幅もランオフエリアも狭いため、アメリカンレースならではの迫力満点なロードレースを見ることができる。

かつてはF1も開催されたサーキットであるが、安全性に難があるとされており、2014年NASCARスプリントカップの大クラッシュの際も安全設備の古さについて心配の声が上がった。F1王者ジャッキー・スチュワートの後釜と目されていたフランソワ・セベールの身体が真っ二つに切り裂かれたのも、ここグレンだ。


④プチル・マン
1998年初開催。マツダがタイトルスポンサーとなり、ロード・アトランタで11月の頭に開催される10時間レース。アメリカンル・マンから続くヨーロッパのプロトレースとの交流戦。かつてはWECの一戦にも組み込まれ、欧米LMP1対決が見れるビッグイベントだった。しかしLMP2を最高クラスとしたヨーロピアンル・マンとの交流戦になってからは、欧州組は激減。今ではただのIMSAの最終戦に成り下がっている。
ヨーロピアンル・マンシリーズが、台数の減少で後半戦が開催できなくなったとき、このプチル・マンのポイントを二倍にして選手権ポイントに加える措置をしたことがある。


以上の主要な耐久4レースで成り立っているのがNAECで、このタイトルだけを狙って参戦するチームも多い。ちなみにNAECのタイトルスポンサーはESM(Extreme Speed Motorsports)のメインスポンサーであり、チームオーナーでもあるテキーラ・パトロン。


○ポイントシステム
全クラスにドライバー、チームタイトルが存在する。
さらにPクラスはエンジンとシャーシ、GTLMはマシンとタイヤ、GTDはマシンのマニュファクチャラーにそれぞれタイトルが用意されている。

システムはドライバー、チーム、マニュファクチャラー共通で、1位が35ポイント、以下32、30、28、26、25、24・・・と1ポイントずつ減って30位以降は1ポイント。このへんもNASCARやインディカーと同系統である。ただしポールポジション、リードラップ、最多リードラップには点数が付かない。

それに加えて「スターティングポイント」といって、レースをスタートした時点で各チームと全ドライバーは1ポイントが加算される。

チームタイトルは車両番号毎である。2台で参戦しても、ポイントは別々に与えられる。

マニュファクチャラータイトルに関しては最上位のマシンのみを数える。例えばシボレーが1-2、フェラーリが3位となった場合、Aの2位は切り捨てるのでシボレーは1位分、フェラーリは2位分のポイントをそれぞれ得られる。


NAECは1位から5-4-3-2がチーム、ドライバー、マニュファクチャラーに与えられるが、終了時点に加えてレースの途中の順位もポイントに加算される。デイトナは6、12、18時間、セブリングとプチル・マンは4、8時間、ワトキンスグレンは3時間時点の順位がそれぞれ加算される。

ジム・トゥルーマン賞、ボブ・アキン賞は350、320・・・200、190とポイントが10倍されたものが与えられ、それに加えてアマチュアドライバーの走行ラップ数がそのまま加算される仕組みになっている。しかしこの2つの賞の順位は公式サイトに表示されていない。


○IMSAの今後
2014年の合併後しばらくDPとLMP2の混走がなされると思いきや、LMP2に圧倒的不利な状況が続き、NAEC以外でのLMP2車両はほぼ消滅。LMPの強豪ESM、OAKはWECに主戦場を移すことになり、マッスルミルクは撤退した。

そのLMP2は2016年以降、マニュファクチャラーが4社、エンジンサプライヤーが1社に制限されることが発表された。本来LMP2はカスタマーシャーシ&カスタマーエンジンで行われるべきもので、チーム側にとっては安く買えて、供給側にとってもACOに設定された低価格でもちゃんと利益が出るくらい台数が売れてほしいわけで。今みたいに独占供給だらけの群雄割拠で実質ワークスシャーシ&エンジン戦争とか、価格高騰なんのそのの開発競争とか、そういうのはLMP1 Non Hybridクラスでやりなさいという話で。エンジンワンメイクはさすがにちと寂しいのではと思うが、カテゴリ本来の目的としてはまぁ正しい判断なのかもしれない。

そのタイミングで2017年の新規格、DPiマシンの創設発表された。iはinternationalのiだ。
DPiは新LMP2のマシンの決められた範囲を改造したものになるため、LMP2マニュファクチャラー4社のうちいずれかとジョイントして開発する必要がある。空力パーツには市販車の意匠を取り入れられるとのことである。この新規格により、LMP2のシャーシ・エンジンサプライヤーが制限されてあふれたコンストラクターたちが北米に殴り込んでくることが期待される。IMSAのPクラスではDPiと新LMP2が混走することが決定されているが、逆にル・マンでLMP2クラスにDPiが出られるかは未定だ。


現在決まっているコンストラクターとメーカーの組み合わせは
ダラーラとキャデラック(GM)
ライリー/マルティマティックとマツダ
オンロークと日産
となっている。オレカは未定。

そしてGTDクラスには、待望のレクサスRC-FとアキュラNSXが参戦予定。日産、マツダ、トヨタ、ホンダと日本車メーカーが大量参戦することになり、日本人レースファンにとっても楽しみなシリーズになる。
WECの隆盛でプロトに再び注目が集まりつつある中で、IMSAの役割はとても重要なモノになり始めているように見えるし、今後に期待がもてるのは間違いないだろう。