観光計画はぐっちゃぐちゃ? | ゲイ嫌いのいない街をさがして

観光計画はぐっちゃぐちゃ?

オアハカといえば、観光資源たっぷりの街である。


・世界遺産に指定された、壮麗なサント・ドミンゴ教会。
・奇観・石でできた滝、イエルベ・エル・アグア。
・樹齢2000年の木、エル・トゥーレ。
・古代サポテカ人の遺した、モンテ・アルバン遺跡、ミトラ遺跡、ヤグール遺跡。


ほかにも、市場見物、マリアッチ鑑賞、手工芸見学など、観光にはもってこいの街なのである。

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なかでも僕が楽しみにしていたのは、イエルベ・エル・アグア。
ミネラルを多量に含んだ湧き水が何千年もかけて創り上げた、壮大な自然のオブジェ。写真を見ただけでも、石の滝がなにか音楽を奏でているのがわかる。その音が聴きたい。

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宇宙だって、本当はいつだって音楽を奏でている。その音が聞こえるように心をチューニングすれば、音楽はオゾン層を超えて心に響いてくる。大気だって、音楽を鳴らしている。写真の中のイエルベ・エル・アグアは、そんな大気の音楽にとけ込むような繊細な音を奏でているように見えた。イエルベ・エル・アグアに行きたいがために、オアハカで一日を過ごせるようにスケジュールを組んだのだ。



コンシェルジェのおニイさんに「イエルベ・エル・アグアまではどう行ったらいいんですか?」と、ニコニコして尋ねる。
するとおニイさん、オフクロさんを亡くした人にでも向けるような同情の表情を浮かべ、「イエルベ・エル・アグアまでは、いまは道路の状況が悪くて行けなくなっているんです。」と告げた。


なにぃぃぃッ!?


じゃ、何のためにオアハカ観光にスケジュールを割いた(フチタンで過ごす日数を1日減らして)んだよッ。
「タクシーでも行けないですか?」声が震えそうになるのを押し隠しながら、そう尋ねてみた。
「道路自体が封鎖されているので、行けません。大変残念です。」と、おニイさん。

くううぅッ!

口惜しさのあまり、コンシェルジェのおニイさんにセクハラでもかましてやりたくなったが、おニイさんが悪いわけではない。ああ、やりきれない!行き場のない憤懣で、胸が張り裂けそう。

ショックな出来事は、いつも自分の知らない間に、自分の手の届かないところで進行しているものだなぁと思う。
僕が東京でフツーに仕事をしたり食べたり寝たりしている間に、広い世界の中の遠い遠い田舎町の道路のひとつがだめになり、そんな世界の動きから見れば微々たる出来事が今日、無邪気にやって来た僕にこんなにも激しい動揺を与え、行き先の変更を余儀なくしている。
ショックな出来事というのはいつも、自分の把握しきれないところで、取り返しがつかないところまで進行している。気がついたときには、とても抗えない「コトの流れに」呑み込まれていくしかなくなっているのだ。人は自由に生きているようでも、とてもじゃないけど抗えないものが沢山ある中で、じたばたと懸命に生きていくしかない。


しかし、このオニイサンはタダ者ではなかった。
メキシカンの黒く澄んだ瞳でじっと僕の目をのぞき込みながら、子供をあやすような笑顔で「サント・ドミンゴ教会は、もう見ましたか?とてもキレイですよ。ここから歩いて5分ほどです。」と、甘い声でスポットを案内してくれる。「ソカロ(街の中心地である広場)も、にぎやかで楽しいです。モンテアルバン遺跡までは、近くからバスが出ていますよ。」
ああ、甘い雰囲気。
しかも、なんてアニキっぽい身のこなし。

カッコいい。。。
メキシコの男たちって、そんなワザを、どこで身につけるの。。。

「わかりました、ありがとう」思わず、あま~い声を返してしまうワタクシでありました(今の今までイライラのかたまりだったくせに)。くっそ~、ひみつのアッコちゃんのコンパクトがあったら、オンナに変身して逆ナンしてやるのによぉ(鏡の精から怒られまんがな)。


取り返しがつかない以上、気持は早く切り替えた方がトクである。
とりあえず可能なものでMAX楽しまなければ、損をするのは自分だ。
モンテ・アルバン遺跡に行くことも可能だったが、ピラミデ(ピラミッド)はティオティワカンでも見たし、オアハカ市内をゆっくり見物することにした。


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町のいたるところに物乞い女がいる。必ず子供を連れているところが、うそっぽい。


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みやげ物はみんなカワイイが、割れ物ばっかり。買えまへんがな。


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死者を身近にとらえるオアハカでは、ガイコツはスヌーピーのようなキャラクター。でも、太陽と組み合わせちゃうのはスゴい。


まずは、カミノ・レアルから近いサント・ドミンゴ教会へ向かうワタクシ。
15世紀頃にこの地を征服したスペイン人がネイティヴ・アメリカンの人々をキリスト教に改宗させるために100年もの歳月をかけて建築した、メキシコ・バロック建築の最高峰であるサント・ドミンゴ教会は、オアハカ観光の一番の呼びものである。とにかく、内装に金箔や宝石がふんだんに使われ、天井には一面『生命の樹』が芸術家たちの手作業によって彫り込まれているという。オアハカを訪ねる人が、必ず一度は来るスポットである。教会前の広場では、子供たちがサッカーをしていた。教会をスケッチする若者たちも。


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サント・ドミンゴ教会は、とにかくでかい。こんなにでかい教会の内装を金銀宝石でピカピカにしてあるなんて、いったい幾ら金がかかるんだろう。それだけすごい金銀財宝を、スペイン人はネイティヴ・アメリカンから略奪して造ったのだ。
そういうことが当時のスペイン人からしてみたら「正しいこと」として行われちゃうんだから、宗教ってコワイ。教育って、すごい。その人のアイデンティティを丸ごと支えるものに、人は簡単にはさからえないのだ。


期待に胸を弾ませて、教会の入り口に向かうと、なんと。。。。。閉まっているぢゃありませんか。
なんで!なんで!教会って、いつでも開いているもんなんじゃないのッ!!入れないなんて、あまりにショックじゃん!
入り口に、銃を持った警備のオニイサンが立っていたので、「Is it close(あいてないの)?」と尋ねてみると、全く英語が通じない様子。ブチ切れそうなほどイライラしたが、オニイサンに罪はない。

仕方なく「指さし会話帳」をパラパラめくり、「閉まっているのか」と訊いた。
コクン、コクンと頷くオニイサン。
「明日は開いていますか?」と訊くと、「明日も閉まっている」とのこと。
「アンタ、そりゃねーだろ。こっちは金も時間もかけて、世界地図のはじっこの日本から来てんだぜ。えっ、ニイちゃんよォッ!飛行機のせまいシートにデブな体を押し込めて耐えること20時間、どんな思いでここまでやって来たと思ってんだぃ(けっこうオキラクに来たくせに)!」と絡んでやりたくなってしまったが、撃ち殺されたらいやなので「グラッシャス(ありがとう)」と呟いて、門に背を向けた。


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教会のスケッチをしていた高校生。


なんてことだろう。。。。じゃ、楽しみにしてたもの、ほぼ全滅なんぢゃん。。。。。
さすがに、すぐには立ち直れない。フラフラと、あてどもなく歩き出すワタクシでありました。