翻訳のコツあるいはテクニックについて書かれた本はこのところほとんど読んでいない。自分も翻訳者の端くれであり、他の翻訳者の訳し方の影響を受けて自分の翻訳スタイルが揺らぐのが怖いという思いがあるせいもあろう。
この本を会社の同僚にもらって読む気になったのは、それが中英、英中の翻訳者の書いたもので、中日の翻訳をやっているぼくに直接の影響はなく、気軽に読めるだろうと思ったからだ。
読んでみて予想どおり直接影響を受けたりすることもなく、翻訳テクニックの一般論として気軽に読み通すことができた。また筆者は若い人だが、知識も才能もある人で、教えられることも少なくなかった。
純粋な語学的な意味での翻訳の善し悪しについての指摘についてはなるほど、と納得したが、政治的な意味での翻訳の適不適についての説明には深さや新鮮味が感じられず、欲求不満になってしまった。
『笔尖上的文化碰撞:对外话语与翻译(筆先での文化の衝突 対外言語と翻訳)』劉強
外文出版社2022年4月第1版