3、4年前、北京で開かれたブックフェアで、梁暁声の姿を目にし、声を聞いたことがある。一緒に仕事をしている若い中国人の翻訳者が子どものころ梁暁声の小説を読んだことがあると懐かしげにぼくに話したことがある。

 西四の本屋でどの本を買おうかと迷っていたとき、この『那些月……』が眼に入り買うことに決めたのはこのような思い出があったからだ。梁暁声が書いたものを読むのはこれが初めて。梁暁声に限らず、ぼくは中国文学をほとんど読んでいない。

 この本を開いて読み始めるまで、ぼくは、てっきりこれは小説だと思っていたのだったが、読み始めてみると、恋愛、給料、読書など若いころのあれこれの思い出について語ったエッセー集だった。

 梁暁声の飾り気のない静かなタッチの文章を読み、今さらだけど中国について考えるにはやはり中国人作家の書いた良い文章を読まなければと思った。政治や経済について書かれた本を通じて考える中国とは違う生身の中国がそこには厳然として存在している。

 

『那些月……梁暁声 著

北京十月文芸出版社20199月第1