新型コロナウイルス感染症の影響で、自由に出かけることもできず、かなり前から考えている雲岡の石窟見学にもまだ行けていない。

 そんなわけで、仏教、仏像に関する本で少しでも事前に勉強しておこうと思いこの『仏教の来た道』を読んでみた。

 仏教についての知識もなく、実際に見た仏像も少ないので、この本の面白さが本当に分かったとはとても言えないが、今後仏像を鑑賞するうえで何かしら得るところがあったようにも思う。

 読んで線を引いたところを下に抜き書きしておこう。

 《仏陀が不老長寿と福を招来する神と一緒に祀られたということは、現世利益の宗教として受容されたことを示している。このことは、福を求め現世利益を追求する中国の仏教の基本的な性格をよく表していて興味がある。》

 《インドにおいては西暦一世紀のころ、すでに仏像が造られていた。仏像とは人間の身体の理想化であり、礼拝の対象でもある。》

 《江南に建国した東晋時代(三一七-四二〇)になると、儒教の権威が衰え、老荘思想が流行するようになった。儒教が中国人の表の文化だとすれば、老荘は裏の文化となる。儒教が礼と秩序の文化であるのに対して、老荘はその体制からはみ出した人が、体制を批判し、傍観者としての立場をとり、自らの心の中に平安を求める思想であった。》

 《七世紀から八世紀にかけて、中国を中心とした東アジア世界が形成された。東アジア世界とは地理的には中国を中心とし、朝鮮、日本、渤海、ヴェトナムを包含する広大な地域をいうが、この東アジア世界を同一世界とみる理由としては、律令制度、漢字文化圏、仏教文化圏の三つが考えられる。》

 今後できる限りたくさんの仏像を見て、ここに抜き書きしたようなことを巡って、ぼくなりに少し考えて楽しみたいと思っている。

 

『仏教の来た道』鎌田茂雄

 講談社学術文庫2003310 日 第1刷発行