このところ、夜、日課になっている翻訳を終えて、寝る前に映画を観るだけの時間がある場合、ネットで面白そうな作品を探して観ている。

 最近観たのは『鉄道員(ぽっぽや)』と『万引き家族』。ともに面白く観たが、ぼくの好みは『万引き家族』。先日観た『歩いても歩いても』も面白かったが、是枝裕和監督の作品には押しつけがましさを感じさせるものがなくて、好感が持てる。

 ところで『鉄道員(ぽっぽや)』には先ごろ新型コロナウイルス感染症で急死した志村けんが炭坑作業員の役で出ていて、良い味を出していた。

 さて一昨夜と昨夜は溝口健二の『祇園の姉妹』を二回続けて観た。一回目はこの映画のどこが良いのかよくわからなかったが、二回目は映画の背景になっている戦前の祇園の街のごみごみした雰囲気とそこに生きる人たちの姿に親しみを感じた。女学校を出て芸妓になったという設定のおもちゃを演じている山田五十鈴があかぬけしていて、観ていて気持ちが良い。

 客に尽くす姉と客を利用して良い生活をしようとする妹(おもちゃ)が結局はともに男にもてあそばれ、その犠牲になってゆく姿が描かれているのだが、そのような姉妹に対する思い入れたっぷりの感情移入は施されていない。

 余情にひたることができた。