はや1月も下旬になりました。今年は暖冬で記録的な雪不足のため、札幌の雪まつり、スキー場への影響が大変懸念されています。冬は冬らしく、穏やかに雪が降り積もる情景が欲しいところです。

 

 水痘帯状ウイルス感染症について考えてみました。このウイルスは子どもさんには水ぼうそう、大人には帯状疱疹という疾患を引き起こします。子どもさんの水ぼうそうでは全身に皮疹が出現します。多くの子どもさんでは比較的病状経過は良好で治癒します。水ぼうそうは治癒しても人間の体の中(神経節)に終生潜んでいます。そして大人になって年を重ね、ストレス、過労、また癌を発症した時などに体の表面に皮疹として再び出現します。現れるのは顔、胸、腹と様々なところです。これが帯状疱疹なのです。つまり帯状疱疹は、水ぼうそう再発型の病気なのであります。子どもの時には全身に皮疹が出るのに対し、再発型の帯状疱疹では身体の一部に帯状に皮疹が出るのです(1)

 今回は大人の帯状疱疹について紹介します。その理由とは高齢となって帯状疱疹を発症すると人によっては大変苦しむ方がおられ、軽視できないからです。

 帯状疱疹については宮崎スタディ(※下記)という有名な疫学調査があります。同調査によりますと帯状疱疹の発症率は、年々増加しています。年代別にみますと20-49歳の発症が最も増加しており、50歳以上の発症がこれに続いています(2)。ただ高齢社会で高齢者の数が多いため、患者さんの実数となると50歳以上の患者さんが多くおられます(3)。帯状ヘルペスは長生きするようになったので増えてきた病気なのです。いわば高齢者で問題となる疾患なのです。この現状を解決するため20163月から50歳以上の人を対象とし、水痘帯状ウイルスの予防接種を実施することが可能となりました。ところが困ったことに水痘帯状ウイルスの予防接種を受けている50歳以上の方は、まだ少ないという問題があるのです。今回調べた限りでは50歳以上の人における予防接種の接種率については報告がありません。ありていに言えば水痘帯状ウイルスの予防接種を知らない50歳以上の人が多いこと、また知っていても皆様は無関心のように私には思われます。いくら私が外来で予防接種について説明しても、「そんなもの、受けねばならないのですか(懐疑的ないし否定的)」「もう年だし、結構です(諦観ないし拒否状態)」などとかわされてしまいます。こちらも、つい「抗ウイルス薬もあるから、まぁ仕方がないか」などと諦めてしまいがちです。しかし、これは大きな問題です。帯状疱疹には様々な合併症が発症する危険性があるのです。特に患者さんに大きな苦痛をもたらす帯状疱疹後神経痛(postherpetic neuralgia:以下PHN)という合併症には医師も患者さんも、大変苦しみます。

ではPHNとはどんな病気なのでしょうか。有り体にいえばPHNは厄介な合併症です。帯状疱疹を抗ヘルペスウイルスで治療したとしても、そのあとに神経痛として痛みが残る疾患がPHNなのです。PHNは高齢になるほど発症することが多く、その発症頻度は10ないし50%とされています。PHNの痛みは極めて強く、ピリピリした疼痛が数カ月も持続することがあります。患者さんは長期間にわたり大変悩ませられます。PHNの治療薬剤にはプレガバリン、抗うつ薬などがあり、また神経ブロックが実施されることがあります。ただ、これら治療もPHNに対し、必ずしも著効するというものではありません。

それでは厄介なPHNに罹らないためには、どうすればよいのでしょうか。その対策としてもっとも有効な手段は、水痘帯状ウイルスの予防接種を受けることであります。さきほども紹介したように4年前に認可されているのにもかかわらず、積極的に予防接種を受けたいという人は、あまりお目にかかることはありません。これはとても残念なことです。当院でも帯状疱疹に罹られる人は常におられます。そのうち一部の方はPHNを発症されます。大変に痛みが強く、患者さんは口を揃えて「まさか、自分が罹るとは思わなかった。私は友人に帯状疱疹の予防接種を強く勧めたい」等と言われます。

高齢化社会の現在、肺炎球菌、インフルエンザと並んで水痘帯状ウイルスワクチンを受けることは必須の要件といえるでしょう。

  

※宮崎スタディ

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000184909.pdf#search=%27%E5%B8%AF%E7%8A%B6%E3%83%98%E3%83%AB%E3%83%9A%E3%82%B9+%E7%96%AB%E5%AD%A6+%E5%8E%9A%E7%94%9F%E7%9C%81+%E6%82%A3%E8%80%85%E6%95%B0%27

 

1 水ぼうそうと帯状疱疹の関係 マルホ製薬のHPからの引用

https://www.maruho.co.jp/kanja/taijouhoushin/about.html

 


2 帯状疱疹大規模疫学調査「宮崎スタディ(1997-2017)」から引用させていただきました

https://www.niid.go.jp/niid/ja/allarticles/surveillance/2433-iasr/related-articles/related-articles-462/8235-462r07.html

 

 

3 宮崎県における年齢別の帯状疱疹患者(19972011 年)

帯状疱疹大規模疫学調査「宮崎スタディ(1997-2017)」から引用させていただきました