1110日の日曜日は爽やかな秋晴れの一日となりました。この良き日、天皇陛下の即位をお祝いする祝賀御列の儀が行われました。祝賀パレードは華麗なる式典となり、全国民を挙げてのお祝いムードが最高潮となりました。

 芸術の秋です。そこで落語会に出かけてきました。落語は芸術ではなく伝統芸能ですが、まぁ良いでしょう。今回は少し変わった趣向の落語会でした。それは俳優の風間杜夫さんが二席の落語を演じる、いわば風間氏の独演会なのです(写真)。客演として二人の上方落語家の出演もあり、端正な落語会でした。主催は某大手企業なのですが、関係者しかチケットを入手できない会なのです。ですから通常は入手が少し困難なチケットであります。たまたま親切な知人が私にチケットを下さり、行くことが出来たという次第です。たいへん有り難く思っています。それにしても流石は名演技で人を魅せる役者さんです、ていねいに演じられた落語を十分に楽しむことが出来ました。

                            

                            写真 チケットの風間杜夫氏

 

 今回、「BFH施設における母乳育児支援」という講演を聴く機会がありました。演者は西神戸医療センター・小児科の本山史子先生です。正直なところ、これまで母乳栄養はあまりにも当然なことのため、かえって無関心でした。しかしお話しを聴き、あらためて母乳の重要性に気付き、幾つか参考になったことがありました。

 まず演題にあるBFHという言葉の意味を恥ずかしながら初めて知りました。BFHとはbaby friendly hospitalの略であり、日本語では「赤ちゃんにやさしい病院」という意味であります。一言でいうと母乳保育を中心に取り組み母児の絆を育くんでいく施設ということなのです。BFHのはじまりは19893月にWHO(世界保健機関)とユニセフ(国連児童基金)が、母乳育児へのサポートを拡大するため「母乳育児成功のための10か条」(1)を発表したときに遡ります。そして19917月になって、本10か条を実践する施設をBFHとしました。現在、世界の134カ国で15000の病院がBFHに認定されています。我国では「日本母乳の会」が、審査を行い、ユニセフへの認定申請を行っています。近畿地方にも11カ所のBFHがあります。BFHを実施している出産施設では母乳支援が良いので母乳栄養が上手くいくことが明らかにされています。

 しかし私は母乳育児成功のための10か条を読んで少し違和感を覚えました。その理由はふたつあります。

 一つ目の理由は10か条が完全な母乳育児を目指しているように感じられたからです。お母さんの中には母乳を出したくても出ない人がおられ、このことで自責の念に駆らせているお母さんもおられます。そのような方々への配慮が少し足らないと思ったからです。しかもユニセフは20184月に新ガイドラインを発表し、「すべての赤ちゃんに対し最初の2年間の母乳育児をおこなうことで一年間で5歳未満の子ども82万人以上の命を救える」としています。しかし現実的には日本では2年間の母乳育児は広く広まってはいません。。日本では以前から断乳と言う言葉もあり、1才を過ぎる頃から授乳を止めることも多くありました。断乳時期に関するあるアンケートによりますと1才から1才半までに断乳する人が最も多いことが示されています(https://st.benesse.ne.jp/ikuji/content/?id=1789)。もっとも最近では卒乳といって子どもさんが母乳に興味が無くなり、子どもさん自身の意思で母乳を止めることが通常となっています。日本小児科学会はWHOやユニセフとは異なり、授乳期間の期間を明示していません。これは発展途上国では栄養不足による小児の死亡を母乳で防ぐ必要があるのに対し,栄養不足がなく乳児死亡も低い日本では必ずしも長期間の母乳が必須ではないとされてます。つまり2年間の母乳育児に縛られる必要はなく、国の事情により母乳育児の期間は様々なのです。

 二つ目の理由は母乳栄養には鉄分不足、ビタミンD不足、齲蝕(うしょく、虫歯のこと)などのリスクが指摘されており、2年間の母乳栄養ではその懸念が捨てきれないからです。これらのうち、今回は紙面の都合上、齲蝕について紹介します。

 母乳栄養を続けていると齲蝕の発症が多いのでしょうか。これについて井出らが1 6 か月児の歯科検診において卒乳した小児234 名および授乳している小児114名を対象として齲蝕の罹患状況を調べた報告があります。。その結果、齲蝕の罹患率は卒乳小児では6.8%であったのに対し、授乳している小児では21.9%でありました。つまり授乳している小児の齲蝕罹患率が有意に高く、1 6 か月で卒乳していないと齲蝕に罹患する危険性が高まることが示されました(2)。では母乳が齲蝕の原因となるのかといえば、そうではありません。離乳食を食べると離乳食が歯に付着し、虫歯の起炎菌が歯に付着します。そこへ母乳が来ると歯で酸が産生され、これが虫歯の原因となるのです。ですから特に夜間の睡眠時に母乳を与えて寝かせつけると虫歯が起こりやすくなります。そこで口腔清掃、要は歯磨きをしっかりしていれば虫歯予防になるのです。私は個々の卒乳児期を尊重し、2歳まで母乳を推奨する考えに基本的には賛成です。ただし歯科医医師の検診を受けることが良いと思います。    1115

   表1 母乳育児成功のための10か条(ユニセフ・WHOによる共同声明)

 https://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_hospital.html

 

 

      

   表2  授乳、卒乳別の齲蝕罹患状態  井出らによる 

      小児歯科学雑誌 544: 462−469 2016

 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspd/54/4/54_462/_pdf/-char/en